1998 Fiscal Year Annual Research Report
〔1.1〕パラシクロファンを核とする拡張共役系の構築と機能
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10146201
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 孝 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20029482)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大北 雅一 北海道大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60211786)
今井 敏郎 北海道大学, 大学院・理学研究科, 講師 (80184802)
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Keywords | シクロファン / 歪み化合物 / 芳香族性 / 芳香族化合物 |
Research Abstract |
1. [1.1]パラシクロファン骨格の速度論的安定化、単離、X線構造解析。我々が当初合成した母体[1.1]パラシクロファンとその若干の置換体は、いずれも溶液中-20℃以下でのみ安定に存在し得る準安定化学種であった。分子モデリングによる綿密な検討に基いて、ベンゼン環上に-CH_2Si(CH_3)_3,-CON(CH_3)_2基を導入するとその活性中心である橋頭位炭素が効果的に立体遮蔽され骨格が著しく安定化されることを見い出し、単結晶として単離することに成功した。この結果は、橋頭位炭素を置換基によって立体的に覆えば[1.1]パラシクロファンは熱的に安定な化合物として取り扱い得ることを示した。単離した結晶のX線構造解析は、既存化合物中では最高度に変形したベンゼン環の存在を明らかにすると共に、向かい合う橋頭位炭素間の距離は2.376Åとvan der Waals半径の和より著しく短く、強い渡環相互作用の存在を示唆した。 2. 速度論的に安定化され、かつ、拡張した共役系をもつ[1.1]バラシクロファン誘導体の合成研究。[4]パラシクロファン系における研究成果に基き、新たにメチレン側鎖上にアルキリデンを導入した[1.1]パラシクロファン誘導体、および、ベンゾ縮環を導入して共役系を拡張した[1.1]ナフタレノファン誘導体の合成を進めた。これらの化合物の合成は未完成であるが、[1.1]パラシクロファン骨格を速度論的に安定化し、かつ、2つのベンゼン環上に電子的性質を異にする置換基を導入することが可能であり、[1.1]パラシクロファンの特徴である強制された渡環相互作用による特性を明かにできると期待される。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] H.Kawai: "A Kinetically Stabilized 1.1 Paracyclophane:Isolation and X-Ray Structural Analysis" Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.37(6). 817-819 (1998)
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[Publications] T.Suzuki: "Biphenyl-Type Electron Acceptors Exhibiting Dynamic Redox Properties: a Novel Electrochromic System" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(13). 1331-1332 (1998)
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[Publications] T.Suzuki: "A New Type of Tricolor Electrochromic Systems Based on the Dynamic Redox Properties of Hexaarylethane" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.(20). 2193-2194 (1998)
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[Publications] T.Tsuji: "Extremely Strained Paracyclophanes: Preparation,Structures,and Properties" Adv.Strained and Interesting Org.Mol.7(in press). (1999)
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[Publications] M.Ohkita: "Generation,Spectroscopic Characterization,and Reactions of 3,4-Benzotropone.Distinctive Photo-" J.Am.Chem.Soc.121(in press). (1999)