1998 Fiscal Year Annual Research Report
癌化、アポトーシスにおけるカルシニューリン情報伝達系の解析
Project/Area Number |
10152266
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
芝崎 太 財団法人東京都臨床医学総合研究所, 微生物研究部門, 研究員 (90300954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大森 信彦 財団法人東京都臨床医学総合研究所, 微生物研究部門, 研究員 (80311421)
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Keywords | カルシニューリン / 脱リン酸化 / Bcl-2 / アポトーシス / 精製 / Bax / Transgenic |
Research Abstract |
カルシニューリンはこれまでの我々の研究によりカルシウム依存性のアポトーシスを制御している可能性を報告した。さらにBcl-2との直接結合やmRNA注入によるXenopus Oocytesでの神経系の著明なアポトーシス誘導作用等、アポトーシス制御に重要な因子であることが判明してきた。我々はこのカルシニューリンが関わる情報伝達系、特にその下流にある基質やアポトーシス制御メカニズムを詳細に解明するため、 1) カルシニューリンによるBcl-2のリン酸化、脱リン酸化制御機構 2) カルシニューリンによるアポトーシス誘導に関わる因子の検索 3) Bcl-2キナーゼの同定 を目的に研究を進めてきた。本年度1年間にアポトーシスに関わるカルシニューリン情報伝達系とBcl-2famiymemberとの関連を解析し、以下の諸点を明らかにした。 1. カルシニューリンはBcl-2とBH4domainを介して直接結合し、Bcl-2のserince残基を脱リン酸化する。 2. この脱リン酸化はBcl-2の抗アポトーシス機能を保持するために必須であり、BH4に存在する24番目のserine残基(S24)を介して行われることが判明した。 3. S24のsingle polnt mutantであるBcl-2-S24Aは脱リン酸化型を模倣した変異体で,Bcl-2-S24Dはリン酸化型を模倣したBcl-2の変異体であるが、BaxはBcl-2-S24Dには結合せずBcl-2キナーゼによるリン酸化がBcl-2Baxの乖離に働いている可能性を示唆した。 4. この可能性に基づいてBcl-2キナーゼを精製し、分子量約50kDaの単一標品を得た。このキナーゼは自己リン酸化、およびBcl-2をリン酸化するとともに、Bcl-2/Bax複合体を乖離した。 5. これまでにカルシニューリン依存性アポトーシスの存在がBHK細胞への遺伝子発現やXenopus Oocytesを用いた実験より示唆されていたが、実は、カルシニューリンがBadを脱リン酸化することによりアポトーシスを制御していることが判明した。 今後ともさらに詳細な解析を進める予定である。さらに実験動物においてカルシニューリン情報伝達系を解析する ためにそのdominat negative変異体を用いたtransgenic ratを作成している。動物モデルができ次第様々な細胞、臓器におけるカルシニューリンの影響を調べる。
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[Publications] Zhu,J.,Shibasaki,F.,et al.: "Intramolecular masking of nuclear import signal on NF-AT4 by casein kinase I and MEKKI." Cell. 93. 851-861 (1998)
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[Publications] Shibasaki,F.: "A new aspect of serine/threonine phosphatase 2B calcineurin." J.Biochem. (発表予定). (1999)
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[Publications] Wang,HーG.,Pathan,N.,Shibasaki,F.,et al.: "Calcineurin promotes cell death by dephosphorylating BAD" Science. (発表予定). (1999)
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[Publications] Shimoyama,M.,Komuro,I.et al.: "Calcineurin plays a critical role in pressure overload-induced cardiac hypertrophy." J.Clinic.Invest.(発表予定). (1999)
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[Publications] 芝崎 太: "カルシニューリンとBcl-2の相互作用および情報伝達系との関わり" 臨床免疫. 30. 689-696 (1998)
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[Publications] 芝崎 太: "カルシニューリンの新たな展開:神経細胞死制御" 脳の科学. 20. 203-208 (1998)
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[Publications] 大森信彦、芝崎 太: "カルシニューリンによる転写因子調節、NFーATの機能制御を中心に" 蛋白質 核酸 酵素. 43. 1047-1054 (1998)
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[Publications] 下重美紀、芝崎 太: "Ca^<2+>と動態;カルシウム/カルシニューリンを介するアポトーシス制御機構" 蛋白質 核酸 酵素(臨時増刊号). 43. 1877-1883 (1998)
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[Publications] 近藤英作、芝崎 太: "Bcl-2によるアポトーシス制御機構の新たな展開;カルシニューリンはBcl-2の機能制御因子である" 実験医学. 16. 1253-1258 (1998)
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[Publications] 芝崎 太: "カルシニューリンの脳における新たな展望" 神経精神薬理. 16. 205-208 (1998)
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[Publications] 瀬戸口 るり、芝崎 太: "CTLA-4(CD152)からのシグナル" 臨床免疫. (発表予定). (1998)