1998 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質の安定性・折れたたみ機構における水・変性剤の分子メカニズム
Project/Area Number |
10157203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池口 満徳 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (60261955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 周吾 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90272442)
清水 謙多郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80178970)
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Keywords | 疎水効果 / 疎水性相互作用 / 変性剤 / 尿素 / 分子シミュレーション / 分子動力学法 / 大規模並列計算機 / 並列計算環境 |
Research Abstract |
本研究では,蛋白質の安定性・折れたたみ機構において,特に水や変性剤のもたらす溶媒効果に焦点をあて,コンピュータシミュレーションにより,その分子メカニズムを解明することを目的とした.そのために,(1)これからのスーパーコンピュータの潮流である超並列スーパーコンピュータ用の分子シミュレーションソフトウエアの開発,(2)溶媒効果,とくに,統計力学的扱いが要求される疎水効果理論の構築,(3)変性剤を導入した分子シミュレーションによる変性剤効果の解明を行った. 本研究では,通信最適化や負荷分散を効率的に行えるプログラミング環境Parsleyを開発し,それを生体高分子シミュレーション(XYZ系:MARBLE,二面角系:NORMA)に応用した.XYZ系,二面角系とも,本研究により新たな並列化方式が開発された.また,分子動力学ソフトウエアMARBLEは新たに開発したもので,長距離クーロン相互作用をカットオフなしに扱うことのできるFast Multipole Methodなど,近年の分子シミュレーションの最新技術を導入したものとなっている. 以上のシミュレーション技術を用い,疎水効果の物理的起源を検討した.疎水効果の起源では,従来,相対立する水の構造化説と排除体積効果説が提唱されていた.本研究では,以上の2つの対立する説を統合的に理解する理論を構築し,疎水効果の起源を明らかにした. さらに,以上の理論を変性剤(尿素)を導入した系に適用し,変性剤が疎水効果をどう変化させるかを解析した.疎水効果の自由エネルギーは,空孔生成項と溶質-溶媒の分散力項からなるが,尿素は,空孔生成項に対しては疎水効果を強め,分散力項では疎水効果を弱めることがわかった.全体として尿素の効果は,2つの項が微妙なバランスを持って疎水効果に影響していることがわかった.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Mitsunori Ikeguchi: "Roles of hydrogen bonding and the hard core of water on hydrophobic hydration" Journal of Physical Chemistry B. 102. 5891-5898 (1998)
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[Publications] Mitsunori Ikeguchi: "Calculation of Temperature Dependence of Free Energy caused by Potential Function Changes" Chemical Physics Letters. 288. 333-337 (1998)
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[Publications] Tatsuya Murata: "Parallel programming environment with dependence-driven subtask scheduling:design and application to molecular dynamics simulation" Proceedings of the 2nd IASTED International Conference PDCN. 650-653 (1998)
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[Publications] Shugo Nakamura: "Parallel algorithm for efficient calculations of second derivatives of conformational energy function in internal coordinates" Journal of Computational Chemistry. 18. 1716-1723 (1998)
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[Publications] Seishi Shimizu: "Size dependence of transfer free energies:a hard-sphere-chain-based formalism" Journal of Chemical Physics. 110. 2971-2982 (1999)
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[Publications] Seishi Shimizu: "Alcohol denaturation:Thermodynamic theory of peptide unit solvation" Journal of the American Chemical Society. (印刷中). (1999)