1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10165222
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
池島 三与子 日本医科大学, 医学部, 講師 (30246938)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 隆 日本医科大学, 医学部, 教授 (20125074)
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Keywords | ミスマッチ修復 / DNA修復蛋白質 / ゲノム不安定性 / 発癌 |
Research Abstract |
私達は、バキュロウイルス系による発現蛋白質を用いてヒトのMutSホモログの一つであるhMSH3がミスマッチ修復の初期過程であるミスマッチ結合に直接関与することをすでに明かにした。すなわちhMSH3をhMSH2と共に発現させると hMutSβ(hMSH2/hMSH3)を形成し、2-4塩基の挿入/欠失ミスペアに結合した。hMutSβの活性は、hMSH2を含むもう一つの複合体、hMutSα(hMSH2/hMSH6)が塩基置換ミスマッチおよび1塩基の挿入/欠失ミスペアに結合するのと質的に相補していた。 本年度は細胞の核抽出液を用いたミスマッチ結合活性を測定する方法を確立した。ミスマッチ結合活性はgel shift assayとwestern assayを組み合わせたShift-Western法で測定し、hMutSαあるいはhMutSβとミスマッチとの複合体を同定した。hMSH3蛋白質に対する抗体を作成し核抽出液に添加しミスマッチ修復活性への阻害様式を検討した。塩基置換ミスマッチの修復活性は阻害されず、2塩基の挿入/欠失ミスペアとの活性のみが阻害され、発現蛋白質を用いて得られた結合実験の基質特異性の結果と一致した。以上のことからhMSH3蛋白質は細胞内において挿入/欠失ミスペアの認識および修復に直接関与すると考えられ、その変異は細胞のミスマッチ修復活性を低下させゲノム不安定性に重大な影響をもたらすと考えられた。一方hMSH3遺伝子が増幅しているメソトレキセート耐性細胞ではhMutSαの形成が抑制され、塩基置換ミスマッチ修復活性が低下し、ゲノム不安定性が昂進していた。このことはhMSH3遺伝子の変異だけでなく発現量の極端な変動も細胞のミスマッチ修復およびゲノム安定性の維持に重要な影響を与えることを示している。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 池島三与子 他: "真核生物におけるミスマッチ修復の役割とその分子機構" 実験医学. 16. 153-160 (1998)
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[Publications] Orimo,H. et al.: "A novel missense mutation and frameshift mutations in the type II receptor of trans-forming growth factor-β gene in sporadic colon cancer with microsatellite instability." Mutation Res.Genomics. 382. 115-120 (1998)
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[Publications] 池島三与子 他: "癌抑制蛋白質と制癌剤;ミスマッチ蛋白質" 癌と化学療法. 24. 1392-1399 (1997)
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[Publications] Palombo,F. et al.: "hMutSβ, a heterodimer of hMSH2 and hMSH3, binds to insertion/deletion loops in DNA." Curr.Biol.6. 1181-1184 (1996)
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[Publications] Watanabe,A. et al.: "Genomic organization and expression of the human MSH3 gene." Genomics. 31. 311-318 (1996)
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[Publications] Nakajima,E. et al.: "Nine-bp repeat polymorphism in exon 1 of the hMSH3 gene." Jpn.J.Human Genet.40. 343-345 (1995)
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[Publications] 池島三与子 他: "「DNA複製・修復と発癌」(松影昭夫編)のうち第II章の3「ミスマッチ修復の分子機構と発癌」" 羊土社, 15 (1996)