1998 Fiscal Year Annual Research Report
膵ラ氏島ESTの近傍遺伝マーカーを用いた糖尿病との関連解析
Project/Area Number |
10168202
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井ノ上 逸朗 群馬大学, 生体調節研究所, 助教授 (00192500)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 純 群馬大学, 生体調節研究所, 教授 (40270855)
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Keywords | 糖尿病 / 患者・対照関連解析 / EST / 膵β細胞 |
Research Abstract |
日本人におけるNIDDMの特徴は、膵β細胞からのインスリン分泌不全を一義的な原因とする。 一方欧米人のNIDDMはインスリン抵抗性を主徴としており、欧米人と日本人ではNIDDM遺伝背景が異なることを示唆している。我々は膵β細胞で発現している遺伝子の中にNIDDM原因遺伝子が存在すると予想し、ヒトゲノム計画の一端としてヒト膵ラ氏島の遺伝子分離を開始した。すでに膵ラ氏島で発現している遺伝子プール(EST,expressed sequence tag)、約10000個を分子資源として獲得できており、塩基配列も決定している。さらにRHマッピング法により、それらESTの染色体上の位置決定、すなわちSTS(sequence tag site)化を精力的に展開させている。染色体の位置が決定できると、その近傍に存在する多型遺伝マーカーを利用することにより、患者・対照関連解析が可能である。加えて最近SNPs(single nucleotide polymorphisms)が全ゲノムに配備されつつあり、急速にその密度を増している。欧米ではSNPsをゲノム全域で解析し、患者・対照関連解析により疾患遺伝子を同定する試みが主流となりつつある。本研究では、膵ラ氏島ESTから得られたNIDDM候補遺伝子のSNPs解析もしくは多型マーカー解析により、糖尿病原因遺伝子検索をおこなった。加えて、最近単一遺伝子異常による糖尿病(MODY;maturity-onset of diabetes of the young)の原因遺伝子が相次いで解明されている。これらの遺伝子がよりcommonな糖尿病(NIDDM)の原因ともなりうるかの検討もおこなった。 候補遺伝子としてインスリン分泌顆粒の酸性化に重要な役割を果たしていると考えられるプロトンポンプサブユニットのひとつであるH^+-ATPase(ATP6F)、リン酸のトランスポートを担う膜蛋白であるNa-Phosphate Transporter(DNPI)を解析した。ATP6Fではまったく有意な関連を認めていない。一方NPT近傍多型マーカー(DllS1359)とNIDDMとの有意な関連があった。DNPIもしくは近接する遺伝子が糖尿病の原因遺伝子としてなんらかの関与があるものと示唆された。結論をつけるため、サンプル数を増やす、変異のスクリーニングをおこなうなど、より発展させた解析が進行中である。
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[Publications] Shirou Yamada: "Identification of mutations in the hepatocyte nuclear factor-1 α gene in Japanese subjects with early-onset NIDDM and functional analysis of the mutant proteins." Diabetes. 48. 645-648 (1999)
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[Publications] Hideaki Tomura: "Loss-of-function and dominant-negative mechanisms associated with hepatocyte nuclear factor-1 β mutations in familial type 2 diabetes mellitus." J Biol Chem. (in press). (1999)
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[Publications] 井ノ上逸朗: "糖尿病の分子遺伝学 -単一遺伝子変異-" Diabetes Frontier. 10. 115-119 (1999)