1998 Fiscal Year Annual Research Report
導管における硝酸イオンを介した器官間情報伝達の分子機構
Project/Area Number |
10170220
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
末吉 邦 新潟大学, 農学部, 助教授 (10216278)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
王子 善清 神戸大学, 農学部, 教授 (90031195)
大山 卓爾 新潟大学, 農学部, 教授 (30152268)
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Keywords | 導管 / 硝酸イオン / 硝酸還元酵素 / 亜硝酸還元酵素 / 長距離輸送 / 器官間コミュニケーション |
Research Abstract |
「目的」本研究は、硝酸イオンが導管内を移動し、葉の細胞に供給される過程でどのようにシグナル機能を発現し、硝酸同化系遺伝子の発現を制御しているのかを明らかにすることを目的とする。具体的には、(1)導管以外に存在する硝酸イオンのシグナル機能の有無、(2)シグナルの受容機構、(3)導管中の硝酸イオン濃度を制御している因子の探索を目的とする. 「経過」まず、葉におけるNR,NiR両遺伝子の発現レベルと導管以外のコンパートメントの硝酸イオン濃度に相関があるかを調べた.つまり、植物を無硝酸培地に移した後の葉におけるNR、NiR両mRNA蓄積量と葉部アポプラスト液および細胞質中の硝酸イオン濃度を経時的に測定し、変化を比較した。次に、葉と根における高親和性硝酸イオン輸送体遺伝子発現の硝酸イオン応答性を調べた.さらに、根の導管柔細胞より導管への硝酸イオンの積み込みに関わる遺伝子の探索を試みた.すなわち、オオムギ根の中心柱および皮層由来のcDNAを用いてcDNAサブトラクション法により中心柱特異的に発現している遺伝子をクローニングした. 「結果・考察」植物を無硝酸培地に移し、硝酸の供給を止めるとNR、NiR両mRNA蓄積量と導管液硝酸イオン濃度は急速に低下したが、葉部アポプラスト液中の硝酸イオン濃度および細胞質硝酸イオン濃度の低下はわずかであった.以上のことより、葉における硝酸同化系遺伝子は、細胞質やアポプラスト中の硝酸イオンではなく、導管液中の硝酸イオンに応答して発現制御されていると結論づけた.ノーザン解析により、オオムギ高親和性硝酸イオン輸送体遺伝子は根にのみ発現していた。高親和性の硝酸イオン輸送体は葉における硝酸イオンの取り込みに関与していないことが示唆された.中心柱に特異的に発現している遺伝子60クローンを得た。全クローンの塩基配列分析を終了したが、硝酸イオンの導管への積み込みに関与する遺伝子はまだ得られていない。
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