1999 Fiscal Year Annual Research Report
アジア太平洋地域の文化変容における米国の位置と役割
Project/Area Number |
10201206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
瀧田 佳子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (40154950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
有賀 夏紀 埼玉大学, 教養学部, 教授 (20114358)
恒吉 僚子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (50236931)
能登路 雅子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (70164712)
廣部 泉 名古屋大学, 言語文化部, 講師 (80272475)
藤田 文子 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (50147005)
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Keywords | アメリカ / 多文化主義 / アジア系アメリカ人 / エスニシティ / ジェンダー / 女性史 / 日系人文化 / 教育 |
Research Abstract |
平成11年度は、10年度のアメリカ多文化主義の包括的研究の成果をふまえて、(1)アジア・太平洋地域における高等教育とアメリカの影響、(2)アジアにおけるアメリカ人宣教師の活動と文化衝突、(3)環太平洋地域におけるジェンダー研究の新しい動向の三つの柱をたてて研究をおこなった。(1)では恒吉を中心として、留学生の実態調査をも含めて班の研究テーマとしたほか、名古屋大学高等教育センター長、馬越 徹教授を招聘して公開研究会をもち、アメリカ・モデルの高等教育のアジアの知識人育成に果たした役割を検証した。(2)では、研究協力者の川野美砂子が北タイのチェンマイに調査に赴き、文化人類学的フィールド・ワークをおこなった成果を発表した。これまでタイにおけるアメリカの影響が論じられることは皆無であったが、この調査により、従来注目されていなかった地域での研究の方向性が見えた。来年度も引き続き調査する必要を確認した。また中国、上海でのアメリカ人宣教師の女子教育面での影響についても研究を開始した。廣部はアメリカでの調査をふまえ、ハワイにおける宣教師とこれらを比較検討した。(3)では、瀧田を中心にアジア系アメリカ人(中国系のマキシーン・ホン・キングストン、日系のヒサエ・ヤマモト、ワカコ・ヤマウチ等)の文化・文学研究を発展させ、「文学とマルティカルチュラリズム」として発表した。また瀧田が受け入れ元となったカリフォルニア大学ロサンゼルス校、ヴァレリー・マツモト歴史学教授と7回の研究会を持ち、4つの専門家会議と3つの公開研究会をとおして日系アメリカ人の歴史と文化を従来の農村中心の研究ではなく、都市文化との関連で若い日系人のアイデンティティ確立の過程が議論できたのは大きな収穫であった。ニューメキシコ大学ベス・ベイリー教授とは、第二次大戦時、ハワイにおける女性の労働について、エスニシティとジェンダーとの交差する状況を検討した。これらの三つの研究は来年度、さらに発展させ、まとまった成果をだす予定である。
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[Publications] TAKITA, Yoshiko: "Arishima Takeo and his American Experience"Predecessors - Intellectual Lineages in American Studies. 307-315 (1999)
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[Publications] 瀧田佳子: "娘の母語り-アジア系アメリカ人作家のエスニシティとジェンダー"多文化主義のアメリカ(油井・遠藤編)東大出版会. 209-225 (1999)
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[Publications] 能登路雅子: "歴史展示をめぐる多文化ポリティクス"多文化主義のアメリカ. 187-208 (1999)
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[Publications] 有賀夏紀: "多文化主義とフェミニズム"多文化主義のアメリカ. 115-138 (1999)
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[Publications] 恒吉僚子: "教師は多文化時代に対応できるか"教師の現在・教職の未来―あすの教師像を模索する 教育出版(油布編). 97-113 (1999)
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[Publications] 藤田文子: "日米知的交流計画を1950年代の日米関係"アメリカン・スタディーズ. 5号. (2000)
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[Publications] 瀧田佳子: "アメリカンライフへのまなざし"東京大学出版会. 257 (2000)
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[Publications] 恒吉僚子: "「教育崩壊」再生へのプログラム―日米学校モデルの限界と可能性"東京書籍. (1999)