2000 Fiscal Year Annual Research Report
生体内での異性化反応およびプロトン移動反応における選択性の発現機構
Project/Area Number |
10206206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神取 秀樹 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70202033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
七田 芳則 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60127090)
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Keywords | 赤外分光法 / レチナール / プロトンポンプ / 異性化 / 超高速分光 / バクテリオロドプシン / ロドプシン / ダイナミクス |
Research Abstract |
我々は光駆動プロトンポンプであるバクテリオロドプシンやロドプシンなどの視物質を対象として、生体内での異性化反応やプロトン移動反応のメカニズムを明らかにするために研究を行っている。特に本研究においては、効率や選択性、方向性といった生体がもつ特異性がどのように発現されているのか、その機構を蛋白質の構造や光反応ダイナミックスと結び付けて明らかにすることを目指した。このためには反応過程における蛋白質の構造変化を捉えることが最重要となるが、我々は低温赤外分光法を用いたこれまでにない精度の測定系を構築しており、これをもとにして、蛋白質試料の同位体標識や変異蛋白質の測定を行うことで、生体内での化学反応に伴う蛋白質の構造変化を解析した。 バクテリオロドプシンの光異性化反応、プロトン移動反応に対する研究の結果、異性化反応によってバクテリオロドプシン中に存在する18個のスレオニンの中で3個だけが構造変化することが明らかになった。これは異性化によって蛋白質の大きな構造変化は起こらない、という考えを支持する実験結果である。一方、発色団から11Å以上離れた17位のスレオニンに水素結合変化が見られたことは、構造変化のための特異なチャネルの存在を示唆するものである。さらに、重水置換可能なO-H基をもつ89位のスレオニンは異性化によって水素結合が強くなるが、この水素結合はL、M中間体でも変わらないことがわかった。これは、89位のスレオニンがポンプのためのスイッチ部位を構成しないことを意味する実験事実である。 さらに細菌の光センサーであるイエロープロテイン、視物質の中で色覚を担う赤感受性色素や緑感受性色素の赤外分光により、機能発現過程における蛋白質の側の構造変化を明らかにした。また、フェムト秒蛍光分光法を用いて視物質ロドプシンの測定を行い、励起状態における異性化反応過程を明らかにした。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] Kandori,H.: "Local and Distant Protein Structural Changes upon Photoisomerization of the Retinal in Bacteriorhodopsin"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 97. 4643-4648 (2000)
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[Publications] Kandori,H.: "Water Structural Changes Involved in the Activation Process of Photoactive Yellow Protein"Biochemistry. 39. 7902-7909 (2000)
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[Publications] Maeda,A.: "Relocation of Internal Bound Water in Bacteriorhodopsin during the Photoreaction of M at Low Temperature : An FTIR Study"Biochemistry. 39. 10154-10162 (2000)
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[Publications] Kandori,H.: "Direct Observation of the Bridged Water Stretching Vibrations inside a Protein"J.Am.Chem.Soc.. 122. 11745-11746 (2000)
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[Publications] Kandori,H.: "Role of Internal Water Molecules in Bacteriorhodopsin"Biochim.Biophys.Acta. 1460. 177-191 (2000)
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[Publications] Hirano,T.: "Chloride Effect on Iodopsin Studied by Low-Temperature Visible and Infrared Spectroscopies"Biochemistry. 40. 1385-1392 (2001)
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[Publications] Kandori,H.: "Excited-State Dynamics of Rhodopsin Probed by Femtosecond Fluorescence Spectroscopy"Chem.Phys.Lett.. 334. 271-276 (2001)
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[Publications] Kandori,H.: "Tight Asp85-Thr89 Association during the Pump Switch of Bacteriorhodopsin"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 98. 1571-1576 (2001)
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[Publications] Imai,H.: "Difference in Molecular Structure of Rod and Cone Visual Pigments Studied by Fourier Transform Infrared Spectroscopy"Biochemistry. 40(in press). (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "ロドプシンの光反応ダイナミクス"物性研究. 75. 752-766 (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "プロトンを能動輸送するためのタンパク質の「動き」:バクテリオロドプシンの中間体構造からわかったこと"現代化学. 1月号. 55-57 (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "タンパク質分子ポンプのダイナミズム"日本物理学会誌. 2月号. 75-82 (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "季刊化学総説「超高速化学ダイナミクス(ピコ・フェムト秒領域の化学)」"日本化学会. 11 (2000)
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[Publications] 山崎洋一: "シリーズ・ニューバイオフィジックスII「ポンプとトランスポーター」"共立出版(日本生物物理学会編). 15 (2000)
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[Publications] 神取秀樹: "バイオサイエンスの新世紀:第7巻 生体膜のエネルギー装置"共立出版(日本生化学会編). 13 (2000)
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[Publications] 神取秀樹: "生体とエネルギーの物理:生命力のみなもと"裳華房(日本物理学会編). 29 (2000)