1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10211206
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
掛下 知行 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (90127209)
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Keywords | マルテンサイト変態 / Fe-Ni-Co-Ti合金 / Fe-Ni-Cr合金 / 強磁性 / 反強磁性 / 強磁場 / 臨界磁場 / 分子磁場 |
Research Abstract |
近年、我々は、変位型構造相変態、特にマルテンサイト変態に及ぼす強磁場効果について調べ、磁場は変態を促進させることならびにマルテンサイト晶の分布に影響を与えることを明らかにして来た。さらに変態に及ぼす磁場エネルギーについて考察し、変態開始温度の磁場依存性を表す式を導出し、その妥当性をいくつかの系において確認した。この一連の研究成果を考慮すれば、温度、応力に加え磁場の複合的な変化に対して形状記憶効果あるいは擬弾性を示すインテリジェントマテリアルの実現ならびに磁場印加に上る新しい材料組織制御(組織ならびに変態過程を磁場で制御する)が十分に期待できる。 本研究では、前者の変態擬弾性と関連する磁気弾性マルテンサイト変態(磁場の印加、除去に伴いマルテンサイトが生成、消滅する)の情報を得るために、Fe-Ni-Co-Ti形状記憶合金のマルテンサイト変態に及ぼす強磁場効果について調査した。また、後者の変態過程の磁場制御に関する知見を得るために、Fi-Ni-Cr、Fe-Niならびにオーステナイト系ステンレス鋼のマルテンサイト変態に及ぼす磁場効果について調査した。 (1)Fe-Ni-Co-Ti合金の磁気弾性マルテンサイト変態 この試料の変態温度、M_s,A_sA_fを電気抵抗の温度依存性から求めた。それらは、127,60,ならびに159Kである。T>A_fの温度領域では、磁気弾性マルテンサイトのみが生成するすなわち、H_c(臨界磁場)以上の磁場でマルテンサイトが誘起され、磁場除去とともにそれが消え、H_fの磁場で完全に消滅する。一方、M_s<T<A_fの温度領域では磁場誘起されたマルテンサイトの一部が磁気弾性である。すなわち、磁場印加により生成したマルテンサイトは、磁場除去時ですべて戻らず一部が残留する。しかしながら、残留したマルテンサイトは、A_f温度以上の温度で消失する。以上の結果は、マルテンサイトの形状歪が温度、応力のみならず磁場で制御できることを示している。 (2)変態過程の磁場制御 マルテンサイト変態を変態過程(kinetics)の観点から分類すると、非等温変態と等温変態の2種類に分けられる。前者は、明確な構造相変態温度M_sを持ち、かつその温度でマルテンサイト変態が瞬時に起きるのに対し、後者は明確な構造相変態温度を持たないが、ある温度である時間(潜伏時間)保持するとマルテンサイト変態を開始する。これまでの研究では、両変態過程が全く異なるものとされてきた。しかしながら、我々は、両変態過程が密接に関連することを実験的に示し、これらの事実を考慮して両変態過程を統一的に解釈する現象論を導出した。この理論によると以下のことが予想される。 (i)臨界磁場以上の磁場下では、等温変態が非等温変態に移行する. (ii)臨界磁場以下の磁場下では、等温変態のノーズ温度(潜伏時間が最も短くなる温度)が下がり、潜伏時間は短くなる. (iii)臨界磁場と温度の関係はパルス磁場を用いた場合と定常磁場を用いた場合とで異なる可能性がある. (iv)オーステナイト系ステンレス鋼には等温変態が存在する. 上述した予想の(i)(ii)の妥当性は、Fe-Ni-Cr合金において、予想(iii)の妥当性はFe-Ni合金において、(iv)のそれはオーステナイト系ステンレス鋼において確かめた。また、モデルによる臨界磁場と温度の関係ならびにTTT図の計算結果は実験で得られたそれらと良く合うことが分かった。これらの結果は、磁場が変態過程を制御し得ることを示している。したがって、変態過程と密接に関連し、かつ材料の強度、靭性と関連するマルテンサイト量ならびに組織を、磁場で制御することが可能であると言える。
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[Publications] T. Kakeshita: "Martensitic transformations in some ferrous and non-ferrous alloys under magnetic field and hydrostatic pressure"Phase Transition. Vol. 70. 65-113 (1999)
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[Publications] T. Kakeshita: "Kinetics of martensitic transformations in some ferrous and non-ferrous alloys"PHILOSOPHICAL MAGAZINE B. Vol. 80 No. 2. 171-181 (2000)
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[Publications] T. Kakeshita: "Kinetics and origin of martensitic transformations in some ferrous and non-ferrous alloys"The Japan Institute of Metals. 907-914 (1999)
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[Publications] T. Kakeshita: "Effect of hydrostatic pressure and magnetic field on martensitic transformation"Materials Science and Engineering. A273-275. 21-39 (1999)