2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10211206
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
掛下 知行 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90127209)
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Keywords | マルテンサイト変態 / Fe_3Pt / Fe-Pd合金 / バリアント / 磁場制御 / キャパシタンス法 / 磁歪 / tetragonality |
Research Abstract |
これまでに、変位型構造相変態、特にマルテンサイト変態に及ぼす強磁場効果について調べ,磁場は変態を促進させることならびにマルテンサイト晶の分布に影響を与えることを明らかにして来た。さらに、変態に及ぼす磁場エネルギーについて考察し、変態開始温度の磁場依存性を表す式を導出し、その妥当性をいくつかの系において確認した。この一連の研究成果を考慮すれば、温度、応力に加え磁場を用いて結晶学的ドメインすなわちバリアントを制御し、その形状変化を利用したインテリジェントマテリアルの実現が十分に期待できる。 本研究では、バリアントの磁場制御に関する知見を得るために、Fe_3PtならびにFe-Pd合金のマルテンサイト変態に及ぼす磁場効果について調査した。用いた試料はFe_3PtならびにFe-31.2at.%Pdで、FZ法により単結晶を作製した。これらに1373Kで均一化処理を施し、Fe_3Ptに対しては、さらに100時間の規則化処理を施した。マルテンサイト変態挙動ならびに磁気的性質を調べるために、帯磁率測定、X線回折および磁化測定を行った。さらに、Fe_3Ptの[001]方向およびFe-Pd合金の[100]方向における、熱膨張ならびに磁歪をキャパシタンス法により測定した。なお、磁歪測定の磁場印加方向は、歪みの測定方向と同一である。 (1)Fe_3Pt 帯磁率測定ならびにX線回折から、Fe_3Ptは約85Kで立方晶から正方晶へ2次変態に近いマルテンサイト変態をし、その後温度の低下と共に徐々にtetragonality(c/a)が減少していくことがわかった。また、磁化測定の結果から、母相とマルテンサイト相との磁気モーメントはほぼ同じであることがわかった。熱膨張測定の結果、4.2Kでは[001]方向に約0.3%膨張した。この状態にし、定常磁場を印加すると、[001]方向に約2.4%の収縮を示した(3Tの磁場で飽和)。磁場除去による回復歪は0.6%であり、以後の磁場印加・除去に対して可逆的である。この値はTerfenol-Dの3倍にもなる。同様の結果が30Kの場合においても得られた。これらの結果と4Tまでの磁化測定の結果を考慮すると、マルテンサイトのバリアントが磁場により制御され得ることがわかる。 (2)Fe-31.2at.%Pd 帯磁率測定ならびにX線回折から、225Kで立方晶から正方晶へマルテンサイト変態することがわかった。変態開始後、温度低下に伴ってtetragonality(c/a)が減少し、その値は77Kで0.94に達した。磁化測定から母相とマルテンサイト相の磁気モーメントはほとんど同じであった。77Kにおいて[100]方向の磁歪測定を行ったところ、1Tで歪みは2%に達した。この値は磁場印加方向にa軸がすべて配向したときに得られる歪みと一致し、磁場を除去しても回復しない。しかしながら、225K以上でこの歪みは完全に回復した。同様な測定を200Kにおいて行ったところ、77Kの場合と同じ結果が得られた。以上のことから、Fe-31.2at.%Pd合金の正方晶マルテンサイトは、a軸が容易軸であり、[100]方向に磁場を印加すると磁場方向にa軸を持つバリアントが完全に再配列する。
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[Publications] T.Kakeshita: "Giant magnetostriction in an ordered Fe_3Pt single crystal exhibiting a martensitic transformation"Applied Physics Letters. Vol.77No.10. 1502-1504 (2000)
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[Publications] T.Kakeshita: "形状記憶合金のマルテンサイト変態に及ぼす磁場効果"日本AEM学会誌. Vol.8No.4. 433-438 (2000)
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[Publications] T.Kakeshita: "Magnetic Field-Induced Martensitic Transformation and Giant Magneto striction in Fe-Ni-Co-Ti and Ordered Fe_3Pt Shape Memory Alloys"Materials Transactions,JIM. No.8. 882-887 (2000)