1999 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホリパーゼA2ファミリーのメンバーの新しい機能
Project/Area Number |
10212205
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
東城 博雅 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (90135707)
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Keywords | ホスホリパーゼA2 / ホスホリパーゼB / リパーゼ / リン脂質 / 精巣 / ホスファチジン酸 / リゾホスファチジン酸 |
Research Abstract |
(1)小腸Ca非依存性ホスホリパーゼB/リパーゼ(PLB/LIP).PLB/LIPは,はじめてcDNAクローニングされた膜結合型PLA2で,4個の繰り返し配列とC末端の疎水性膜結合ドメインから構成されている。N末端より2番目の繰り返し配列部分のみがホスホリパーゼA2,リパーゼ,リゾホスホリパーゼ活性を触媒する活性ドメインである。これまでに、我々はCOS細胞発現系での部位特異変異法による解析から本酵素は新しいリパーゼファミリーに属する酵素であることを示した。さらに、バキュロウイルスを用いた高効率発現系を確立して産生された変異酵素を精製し、その蛋白化学的性質と触媒反応性を解析した。そして、PLB/LIPのcatalytic triadを形成する3残基は新規のモチーフ内に位置することを確証した。現在、本酵素の結晶化を進めている。PLB/LIPは、小腸の他にラット精子に特異的に発現しているが、マウスやヒト精子にも検出できた。免疫染色によりPLB/LIPは精子の頭部にあるアクロゾームに局在していることが確認されたので、その受精における役割を検討した。PLB/LIPの触媒基Serを特異的に修飾する不可逆性阻害剤であるmethyl arachidonyl fluorophosphonate(MAFP)あるいは抗PLB/LIP抗体でヒト精子を処理すると、精子が受精能を発揮するために必須のアクロゾーム反応(脱顆粒反応)が阻害されることが明らかとなった。ヒト精子にはCa依存性とCa非依存性PLA2活性が検出されるが、前者はMAFPや抗PLB/LIP抗体で全く阻害されず後者のみが阻害された。これらの結果からPLB/LIPがアクロゾーム反応に関与することがわかった。(2)ラット精巣ホスファチジン酸(PA)特異的PLA2.ラット精巣には、PLB/LIPのほかにPA特異的なCa非依存性PLA2(PA-PLA2)活性が検出された。PA-PLA2とPLB/LIPの生殖臓器における機能を比較するために、この酵素を精製してその性状解析をした。PA-PLA2は、PAの2-位を特異的に切断し他のジアシルリン脂質やリゾPAをはじめリゾリン脂質を分解しない。MAFPで本酵素活性は、効率よく阻害された。部分一次構造解析から、PA-PLA2はSerを触媒基とする新しいタイプのPLA2であることが分かった。現在PA-PLA2cDNAをクローニング中である。また、血漿中のリゾPAの主要供給源であるヒト血小板にも精巣と同性状の比較的高いPA-PLA2活性が検出された。(3)PA代謝異常モデルマウス.グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカー蛋白質のGPI部分の合成第一段階を触媒するN-アセチルグルコサミン転移酵素を皮膚特異的ノックアウトするとPAが角層に蓄積されることを見い出した。皮膚でもPAを基質とした時、Ca非依存性PLA2活性が主に検出された。PA-PLA2と連携したPA代謝系の解析にこのノックアウトマウスは有用である。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Nakajima, T.: "Phospholipase A2-mediated superoxide production of murine peritoneal macrophages induced by chrysotile stimulation"Int. J. Biochem. Cell Biol.. (印刷中). (2000)
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[Publications] Koyama, M.: "Elevation of group II phospholipase A2 in serum and amniotic fluid in preterm labor"Am. J. Obstet. Gynecol.. (印刷中). (2000)
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[Publications] Sawaguchi, A.: "Reappraisal of potassium permanganate oxidation applied to lowicryl K4M embedded tissues processed by high pressure freezing/freeze substitution, with special reference to diffential staining of the zymogen granules of rat gastric chief cells"Arch. Histol. Cytol.. 62. 447-458 (1999)
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[Publications] 東城博雅: "新しいリパーゼファミリーに属するホスホリパーゼB/リパーゼ"蛋白質核酸酵素. 44. 1032-1037 (1999)