1999 Fiscal Year Annual Research Report
出芽酵母VDEエンドヌクレアーゼによる遺伝子ホーミングの研究
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10216203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大矢 禎一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (20183767)
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Keywords | 出芽酵母 / 遺伝子ホーミング / VDE / 減数分裂 / DNA切断 / 細胞死効果 |
Research Abstract |
単細胞真核生物である出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの第四染色体上にあるVMA1遺伝子座には、VDEホーミングエンドヌクレアーゼと呼ばれる利己的な振る舞いをする遺伝子が存在している。この遺伝子は個体の生存にとっては不必要であるが、己の遺伝子を効率良く後代に伝達するために特殊化している。VDEホーミングエンドヌクレアーゼは、自己が挿入されていないVMA1遺伝子(VMA1(Δ))の、挿入されるべき箇所を認識して切断する活性を持っている。ホーミングエンドヌクレアーゼによるDNA切断後、VDE遺伝子が挿入されているVMA1遺伝子(VMA1(+))を鋳型にして切断修復が行われた結果、切断された箇所にVDE遺伝子が挿入されることによって自己伝播する。今年度は、遺伝子ホーミング以外のVDEホーミングエンドヌクレアーゼの機能、すなわちホーミングエンドヌクレアーゼが持つ細胞死効果について研究を行った。一般的には、DNA二重鎖の切断は、有害であり、相同組換えや非相同組換え等によるDNA切断修復のシステムは生物一般に高度に保存されている。出芽酵母においてそれらの遺伝子の変異体では、細胞内にもともと存在するエンドヌクレアーゼHOによるDNA切断ですら致死となる。したがってVDEによるDNA切断は潜在的には有害なはずである。そこで遺伝子ホーミングが起きる場合とは異なり、相同染色体に修復の鋳型がない場合のVDEの働きに注目した。VRSをホモで持つ二倍体酵母にVDEをプラスミド上で発現させたところ、体細胞分裂時の増殖速度及び胞子形成率には影響は見られなかったが、胞子の発芽率が著しく低下した。このことは、VRSをホモで持つような株では、VDEは減数分裂過程に有害な効果を持つということを示唆する。したがってVDEは遺伝子ホーミングによってVDE遺伝子を持つ半数体を増やすだけではなく、VDE遺伝子を持たない対立遺伝子を持つ半数体を殺すことによっても自己遺伝子の効率良い伝達を図っている可能性が示唆される。この新しく発見した機能は、特にVDE遺伝子が初めてVMA1遺伝子座に挿入されるとき、あるいは宿主細胞がVDE遺伝子を排除しようとしたときに有効だったと考えられる。
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