2000 Fiscal Year Annual Research Report
試験管内反応系を用いた高等真核細胞でのDNA鎖切断再結合反応の解析
Project/Area Number |
10216206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立花 章 京都大学, 放射線生物研究センター, 助教授 (20188262)
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Keywords | DNA再結合反応 / 放射線適応応答 / 細胞内情報伝達系 / 放射線損傷 |
Research Abstract |
DNAの2本鎖切断は放射線によって生じるDNA損傷の中で生物学的に最も重要な損傷であると考えられている。DNA2本鎖切断の試験管内再結合反応系を用いて、放射線照射した細胞の核抽出液のDNA切断再結合活性を検討した。マウス培養細胞に3GyX線を照射した直後に調整した核抽出液の再結合反応の効率及び正確度は、共に非照射に比べて大きく低下していた。X線照射後一定時間培養を行った後調整した核抽出液では、培養時間とともに、再結合の効率も正確度も共に上昇した。再結合の誤りは、殆ど全て切断点周辺のDNA領域の欠失によるものである。照射直後の抽出液による誤った再結合では欠失の範囲が非照射細胞の抽出液による欠失よりも大きく、照射後培養を行うと、欠失領域は照射前の程度に回復した。 一方、細胞に低線量の放射線を予め照射すると、その後の高線量の放射線照射に対して抵抗性となる現象が知られており、放射線適応応答を呼ばれている。2cGyの低線量放射線を予め照射し5時間後に3Gyを照射した細胞の核抽出液では、上述の未照射の細胞への3Gy照射直後とは異なり、DNA切断再結合反応の効率と正確度は低下せず、非照射の場合とほぼ同程度の高率であった。従って、この試験管内反応の結果は細胞で見られる適応応答の結果と良く一致している。放射線照射などの刺激を受けると、細胞機能の変化が生じることにより、DNA切断再結合反応は制御されていることを示している。また、DNAエンドジョイニングは放射線適応応答過程に関与する非常に重要な要因の一つであることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Yamada,T.,Tachibana,A.,Shimizu,T.,Mugishima.H.,Okubo.M.,and Sasaki,M.S.: "Novel mutations of the FANCG gene causing alternative splicing in Japanese Fanconi anemia."Journal of Human Genetics. 45巻2号. 159-166 (2000)
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[Publications] Takabashi,A.,Ohnishi.K.,Tsuji,K.,Matsumoto.H.,Aoki,H.,Wang.X.,Tamamoto,T.,Yukawa.O.,Furusawa,Y.,Ejima,Y.,Tachibana,A.,and Obnishi,T.: "WAF1 accumulation by carbon-ion beam and α-particle irradiation in human glioblastoma cultured cells."International Journal of Radiation Biology. 76巻3号. 335-341 (2000)