2002 Fiscal Year Annual Research Report
試験管内の反応系を用いた高等真核細胞でのDNA鎖切断再結合反応の解析
Project/Area Number |
10216206
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
立花 章 京都大学, 放射線生物研究センター, 助教授 (20188262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤堂 剛 京都大学, 放射線生物研究センター, 教授 (90163948)
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Keywords | DNA再結合反応 / 放射線適応応答 / p53 / 染色体異常 |
Research Abstract |
低線量放射線を予め照射した細胞においてみられる放射線適応応答は、その後の高線量の放射線による染色体異常や突然変異の生成を低下させ、致死効果を軽減する。これらの生物効果にはDNA2本鎖切断の修復が関与しているものと考えられる。そこで、放射線照射された細胞の核抽出液を用いた試験管内反応系により、放射線適応応答における非相同DNA末端結合反応を解析した。その結果、低線量放射線を予め照射後高線量照射した細胞の核抽出液では、前照射なしに高線量照射した細胞に比べてDNA末端の再結合反応の反応活性が上昇し、また正確度も高くなった。これらのことは、染色体異常などで見られる放射線適応応答に非常によく対応した末端結合反応が生じていることを示しており、放射線適応応答の少なくとも一部に非相同末端結合機構が関与しているものと考えられる。 放射線によって生じる種々の細胞内反応にはp53タンパク質が関与することが知られている。また、p53欠損マウス細胞では染色体異常の放射線適応応答が起こらない。そこで、上に述べた放射線適応応答でのDNA末端結合反応にp53が関与するか否かを検討した。その結果、p53遺伝子欠損マウス胎児由来細胞では低線量放射線の前照射の有無にかかわらず、核抽出液の再結合反応活性および正確度はほぼ同程度であり、p53が正常であるm5S細胞で見られた前照射による反応活性と正確度の上昇は見られなかった。このことから、p53は放射線適応応答において、DNA2本鎖切断の再結合反応を制御しており、細胞内情報伝達系とDNA切断修復系とを結ぶ重要な因子であることが示唆される。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Tachibana A., Sasaki, M.S.: "Characteristics of the end-joining of DNA double-strand breaks by the ataxia-telangiectasia nuclear extract"Biochemical and Biophysical Research Communications. 297(2). 275-281 (2002)
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[Publications] Takahashi, A., Asakawa, I., Yuki, K., Matsumoto, T., Kumamoto, M., Kondo, N., Ohnishi, K., Tachibana, A., Ohnishi, T.: "Radiation-induced apoptosis in the scid mouse spleen after low dose-rate irradiation"International Journal of Radiation Biology. 78(8). 689-693 (2002)
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[Publications] Sasaki, M.S., Ejima, Y., Tachibana, A., Yamada, T., Ishizaki, K., Shimizu, T., Nomura, T.: "DNA damage response pathway in radioadaptive response"Mutation Research. 504(1). 101-118 (2002)
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[Publications] Koga, A., Iida, A., Kamiya, M., Hayashi, R., Hori, H., Ishikawa, Y., Tachibana, A.: "The medaka fish Tol2 transposable element can undergo excision in human and mouse cells"Journal of Human Genetics. (印刷中).