1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10217201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (B)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
稲垣 暢也 秋田大学, 医学部, 教授 (30241954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 勝也 秋田大学, 医学部, 助手 (40241666)
堀本 直幹 秋田大学, 医学部, 講師 (40243927)
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Keywords | ABC蛋白質 / ノックアウトマウス / ATP感受性K^+チャネル / イオンチャネル |
Research Abstract |
ATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>チャネル)は、細胞内ATPによって開閉が調節されるK^+チャネルである。申請者らは膵β細胞のK_<ATP>チャネルがスルホニル尿素受容体SUR1と内向き整流性K^+チャネルKir6.2の複合体、心筋のK_<ATP>チャネルが新たなスルホニル尿素受容体SUR2AとKir6.2の複合体であることを明らかにした。本研究ではABC蛋白SURがイオンチャネル(Kir6.2)の機能を調節するメカニズムを明らかにすることにより、ABC蛋白を介するシグナル伝達の普遍性と特異性を解明することを目的とする。 膵β細胞型K_<ATP>チャネル(SUR1/Kir6.2)と心筋型のK_<ATP>チャネル(SUR2A/Kir6.2)はチャネル閉鎖薬である代表的スルホニル尿素剤グリベンクラミドやチャネル開口薬であるジアゾキサイドに対する反応性が大きく異なる。これらは両者の間で異なるSURサブユニットの相違による。そこで、SUR1とSUR2Aのキメラを作成してグリベンクラミドやジアゾキサイドの作用点の同定を試みた。作成したすべてのSURキメラはCOS1細胞にKir6.2と共発現させることによりチャネル電流が認められた。次に、この電流に及ぼすグリベンクラミドやジアゾキサイドの効果を観察し、これらの薬剤のSUR1における作用領域を絞り込んだ。現在では、さらに狭い領域を組換えたキメラを作成して細胞に発現させ、^3H標識のグリベンクラミドの結合親和性を検討しており、SUR1分子内でグリベンクラミドとの結合に特に重要な部位がほぼ同定できた(投稿準備中)。 次に、再構成K_<ATP>チャネルに及ぼすG蛋白質の効果をパッチクランプ法を用いて検討した。その結果、G蛋白質の特にαサブユニットがK_<ATP>チャネルを直接調節していること、その調節様式が膵β細胞型K_<ATP>チャネルと心筋・骨格筋型のK_<ATP>チャネルとの間で異なり、その相違がSURサブユニットの相違によることを明らかにした。 さらに、膵β細胞型と心筋型のK_<ATP>チャネルに共通のKir6.2のノックアウト(KO)マウスを用いて特に神経細胞のK_<ATP>チャネルについて薬理学的検討を行った。KOマウスは千葉大学の清野教授との共同研究により使用可能となった。その結果、対照マウスの黒質神経細胞には膵β細胞型のK_<ATP>チャネル(SUR1/Kir6.2)電流が観察されたが、KOマウスの黒質神経細胞においてはそれが認められなかった。今後、このKOマウスを用いて、スルホニル尿素受容体によるK_<ATP>チャネルの調節機構が解明されるだけでなく、K_<ATP>チャネルの生理学的意義が個体あるいは細胞レベルで明らかになるものと思われる。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Sanchez,J.A.,Gonoi,T.,Inagaki,N.,Katada,T.,and Seino,S.: "Modulation of reconstituted ATP-sensitive K^+ channels by GTP-binding proteins." J.Physiol.507. 315-324 (1998)
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[Publications] Inagaki,N.,and Seino,S.: "ATP-sensitive potassium channels: structure, functions, and pathophysiology." Jpn.J.Physiol.48. 397-412 (1998)
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[Publications] 中田正範、稲垣暢也: "インスリン分泌の分子メカニズム." Mebio. 15. 24-29 (1998)
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[Publications] 稲垣暢也: "K_<ATP>チャネルの分子構造と機能." 腎と透析. 45. 651-656 (1998)
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[Publications] 稲垣暢也: "糖尿病とK_<ATP>チャネル." 診断と治療. 86. 2085-2090 (1998)
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[Publications] 稲垣暢也: "ATP感受性K^+チャネル." 医学のあゆみ. 188. 309-313 (1999)
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[Publications] 稲垣暢也: "受容体型ABCタンパク質SUR." 最新医学. 54. 374-381 (1999)