2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10217201
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
稲垣 暢也 秋田大学, 医学部, 教授 (30241954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古川 哲史 秋田大学, 医学部, 助教授 (80251552)
山田 勝也 秋田大学, 医学部, 助手 (40241666)
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Keywords | ABC蛋白 / イオンチャネル / ATP感受性K^+チャネル / ノックアウトマウス / CFTR / Cl^-チャネル / PDZドメイン / ABCA2 |
Research Abstract |
研究代表者らは、これまでにATP感受性K^+(K_<ATP>)チャネルの構造を明らかにし、ABC蛋白のSURが内向き整流性K^+チャネルであるKir6.2の機能調節を行うことを世界に先駆けて明らかにした。本研究では、ABC蛋白であるCFTRと共役する新たなCl^-チャネル(ClC-3B)の単離に成功した。すなわち、ClC-3Bは、細胞の裏打ち蛋白であるEBP-50の2つのPDZドメインを介してCFTRと共役することにより、初めて外向き整流性Cl^-チャネル(ORCC)として機能が発現することを明らかにした(投稿準備中)。これは、ABC蛋白によるイオンチャネルの機能調節の普遍性を示す結果として極めて重要である。 一方、K_<ATP>チャネルに関しても、特に黒質において多量に発現していることが知られていたが、Kir6.2のノックアウト(KO)マウスを用いて、特に脳におけるK_<ATP>チャネルの分子基盤や機能的役割を明らかにした。すなわち、黒質網様部(SNr)の急性単離細胞のパッチクランプ実験あるいはスライスを用いた細胞外電極記録により、野生型マウスでは膵β細胞型のK_<ATP>チャネルの発現が認められ、細胞を低酸素条件下においたところ、K_<ATP>チャネルが活性化することによって細胞膜が過分極し、神経細胞の発火頻度の低下が認められた。一方、Kir6.2のKOマウスのSNr神経細胞においてはK_<ATP>チャネル活性が認められず、低酸素条件下では細胞膜はむしろ脱分極し、神経細胞の発火亢進を認めた。さらに、KOマウスは低酸素条件下で著しく全身痙攣が起こりやすいことが明らかになった。以上の結果から、SNr神経細胞には膵β細胞型K_<ATP>チャネルが発現して、低酸素や虚血などの代謝ストレス時の痙攣発症を抑制することにより生体防御機構として機能している可能性が示唆された(投稿中)。 ABC蛋白の中でも特にABCA1サブファミリーは最近脂質膜輸送の候補分子として注目されているが、ABCA1サブファミリーに属するABCA2の全長を初めて単離し(Biochem.J.350:865,2000)、この蛋白が脳に極めて発現が多く、特に白質のオリゴデンドロサイトに特異的な発現することから、脳のミエリン形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された(J.Neurosci.21:849,2001)。
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Research Products
(9 results)
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[Publications] Yamada,K.,Nakata,M.,Hoirimoto,N.,Saito M,Matsuoka H, and Inagaki,N.: "Measurement of glucose uptake and intracellular calcium concentration in single, living paucreatic β-cells."J.Biol.Chem.. 275. 22278-22283 (2000)
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[Publications] Zhao,L.-X.,Zhou,C.-J.,Tanaka,A,Nakata,M.,Hirabayashi,T., et.al.: "Cloning, characterization and tissue distribution of the rat ATP-binding cassette (ABC) transporter ABC2/ABCA2."Biochem.J.. 350. 865-872 (2000)
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[Publications] Zhou,C.-J.,Zhao,L.-X.,Inagaki,N.Guan,J.-L.,Hirabayashi,T., et. al.: "ATP-binding cassette transporter ABC2/ABCA2 in the rat brain : a novel mammalian lysosome-associated membrane protein and a specific marker ....."J.Neurosci.. 21. 849-857 (2000)
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[Publications] Fujita,H.,Matsuura,T.,Yamada,K.,Inagaki,N.,and Kanno,I.: "A sealed cranial window system for simultaneous recording of electrical, blood flow, and optical signals in rat barrel cortex."J.Neurosci.Meth.. (in press). (2001)
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[Publications] 稲垣暢也: "膵β細胞イオンチャネルの分子生物学."Diabetes Frontier. 11. 105-111 (2000)
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[Publications] 稲垣暢也: "ABCトランスポーターと糖代謝."バイオサイエンスとインダストリー. 58. 248-251 (2000)
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[Publications] 稲垣暢也: "スルホニル尿素作用の分子機構."内分泌・糖尿病科. 11. 508-515 (2000)
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[Publications] 稲垣暢也: "インスリン分泌不全の分子機構."糖尿病. (印刷中). (2001)
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[Publications] 山田勝也,中田正範,稲垣暢也: "単一膵島細胞細胞におけるグルコース取り込みと細胞内カルシウムの観察."金原出版、東京、(印刷中). (2001)