Research Abstract |
アドレノメデュリン(AM)は第11染色体短腕遠位部(11p15. 1-3)に位置し、その4kb3^1下流には(CA)nのマイクロサテライト配列が存在することを見い出した。そして、このCAリピート数の違いによる遺伝子多型と様々な循環器疾患の素因や病態との関係を検討した。日本人におけるCAリピート数は11, 13, 14および19の4種類であり、健常人300名(男219, 女81 ; 56±1才)における各アレルの頻度は11 : 28.8%, 13 : 33.5%, 14 : 34.7%, 19 : 3.O%であった。本態性高血圧患者143例(男89, 女54 ; 57±1才)では11 : 30.1%, 13 : 32.9%, 14 : 29.7%, 19 : 7.3%と19リピートのアレル頻度が有意に高かったが(P<0.02)、冠動脈疾患患者111例のアレル頻度は11 : 27.5%, 13 : 32.4%, 14 : 37.8%, 19 : 2.3%と健常人と変わらなかった。また、腎障害のない糖尿病患者106例(男64, 女42 ; 59±2才 ; 11 : 28.8%, 13 : 37.3%, 14 : 29.7%, 19 : 4.2%)および慢性糸球体腎炎を原疾患とする透析患者318例(男184, 女134 ; 57±1才 ; 11 : 27.8%, 13 : 33.7%, 14 : 34.6%, 19 : 3.9%)におけるアレル頻度は健常人と変わらなかったが、糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者128例(男81, 女47 ; 56±1才)においては11 : 32.8%, 13 : 27.3%, 14 : 30.9%, 19 : 9.O%と19リピートのアレル頻度が有意に高かった(p<O.O01)。健常人の中でCAリピート数が11, 13, 14のホモ接合体およびリピート数19のアレルを有する健常者の血漿AM濃度を測定した結果、11 : 7.5±O.2, 13 : 7.O±O.3, 14 : 7.2±0.2, 19 : 7.3±0.4fmol/mlと遺伝子型により有意な違いは認められなかった。また、各遺伝子型の健常人の血圧, 肥満度, 空腹時血糖, 血清総コレステロール濃度などの循環器系の危険因子についても有意差は認められなかった。ヒトAM遺伝子の近傍に存在する(CA)nのマイクロサテライト多型は、既知の循環器系の危険因子とは独立して、本態性高血圧の発症や糖尿病患者における腎障害進展のリスクと関連を有する可能性が推測される。
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