1999 Fiscal Year Annual Research Report
細胞質リン酸ホメオスタシスに対して、液胞が果たす緩衝作用の分子的基盤の解析
Project/Area Number |
10219202
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
三村 徹郎 一橋大学, 商学部, 教授 (20174120)
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Keywords | 細胞膜 / 液胞膜 / ニチニチソウ / 無機リン酸 / プロトンATPアーゼ / プロトンPPiアーゼ / 無機イオン代謝 / 植物栄養 |
Research Abstract |
リン酸イオンは、植物成長における三大栄養素の一つである。自然界でのリン酸の土壌含有量は極めて小さいため(通常10μM以下)、多くの植物は常にリン酸飢餓状態にある。植物が生理機能を正常に遂行するためには、細胞質リン酸濃度を一定の値に保つ必要がある。この濃度維持機構をリン酸ホメオスタシスと呼び、細胞質のリン酸濃度を一定に保つために、液胞がリン酸のreservoirとして緩衝機能を持つことが知られている。本研究では、液胞がリン酸を蓄える機構および細胞質の必要に応じて液胞からリン酸を放出する機構がどの様に制御されているかを、特に液胞膜のリン酸輸送機構と細胞質のリン酸濃度認知機構に焦点を当てて明らかにすることを目的として研究を行っている。 すでに昨年度の研究で、ニチニチソウ培養細胞液胞膜のリン酸輸送活性が極めて高いことを見いだし、単離液胞を用いたリン酸取り込み活性測定系を確立した。本年度は、この液胞へのリン酸取り込み活性の生理機構と分子レベルの性質を検討した。リン酸は取り込みは、ATP及びPPiによって活性化され、H^+-ATPaseの特異的阻害剤であるBafilomycinで阻害される。ATPに対するK_mはおよそ5mMであった。Kチオシアン酸で強く阻害されるが、NH_<24>Clでは阻害がかからないことから、リン酸は、H^+ポンプによって液胞膜に形成された膜電位に依存して、液胞内に取り込まれることが明らかとなった。また、硫酸イオンやリン酸イオンのアナログと考えられるクロム酸によって強い阻害がかかった。さらに、各種アニオン輸送体の阻害剤の内、DIDSが特異的にリン酸輸送活性を阻害した。現在、この阻害剤反応性を利用して、輸送担体の同定を進めている。 また、リン酸欠乏下でのリン酸輸送活性の変動を調べたところ、リン酸欠乏下で単離液胞のリン酸取り込み活性が顕著に上昇することが明らかとなった。現在この活性化機構についても検討中である。
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[Publications] Nakanishi Y.: "Molecular cloning and Sequencing of the cDNA for vacuolar H^+-pyrophosphatase from Chara corallina"Biochim. Biophys Acta. 1418. 245-250 (1999)
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[Publications] Mimura T.: "Regulation of phosphate transport and homeostasis in plant cells"International Review of Cytology. 191. 149-200 (1999)
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[Publications] Reid R. J.: "Phosphate transport in Chara : membrane transport via Na/Pi cotransport"Plant Cell & Environment. (in press). (2000)
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[Publications] Massonneau A: "Phosphate uptake across the tonoplast of intact vacuoles isolated from suspension-cultured cells of Catharanthus roseus"Planta. (in press).
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[Publications] Mimura T.: "Regulation of cytoplasmic pH under extreme acid treatment in suspension cultured cells of Catharanthus roseus : A possible role of inorganic phosphate"Plant & Cell Physiol.. (in press). (2000)
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[Publications] Ashihara H.: "The Encyclopedia of Cell Technology, Physiology of plant cells in culture"John Wiley & Sons, Inc. (in press). (2000)