2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10220202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
嶋村 健児 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70301140)
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Keywords | 神経発生 / 神経上皮細胞 / シグナリングセンター / 領域特異性 / シグナル分子 / パターン形成 |
Research Abstract |
完成した脊椎動物の脳では、領域ごとに異なる形態的特徴と機能分担が見られる。本研究は、脳の部域特異的組織構築の基礎と考えられる神経上皮細胞上のパターン形成機構の解明を目的としている。発生中の神経上皮細胞のシート上には、転写制御因子やシグナル分子などの発生の制御因子が領域特異的に発現している。これらの発現境界はよく一致し、また完成した脳の組織構造の境界にも一致して見受けられることから、初期の脳の基本構成を理解する手がかりであると考えられている。 前年度までの研究で、ホメオボックス型の転写制御因子であるSix3とIrx3の領域特異的な発現が、脳のパターン形成を司るシグナル分子に対する反応特異性を決定していることを明らかにした。本年度は、反応特異性の変化が、実際の脳の組織形成にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。その結果、Irx3を前脳の異所発現させると、間脳の一部が中脳に由来する視蓋様の組織構築を示すようになり、さらに中脳の神経細胞の分子マーカーを発現するようになることを見いだした。このことは、同一のシグナル分子に対して、反応性の異なるドメインを規定することにより部位特異的な組織構築をおこなうという脳の発生メカニズムの一端を明らかにしたことになる。また、Six3はIrx3の発現を抑制し、前後に隣接したドメインを確立するが、この作用は他の転写因子の発現には無効であった。したがって、初期の頭部神経板では、特異的な転写因子の組合わせによって前後の区画が規定され、それぞれの境界は互いに独立に設定されていることが示唆された。また、本研究により終脳と視床下部が同一の遺伝子プログラムに依存して規定されていることが明らかとなったが、これは従来の脳の区分けとは異なる側面を強く支持した。これらの結果を論文にまとめ、現在投稿中である。
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[Publications] Puelles,L.: "Pallial and subpallial derivatives in the embryonic chick and mouse telencephalon, traced by the expression of the genes Dlx2, Emx-1, Nkx-2.1, Pax-6 and Tbr-1"Journal of Comparative Neurology. 424. 409-438 (2000)
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[Publications] 嶋村健児: "前脳におけるパターン形成"実験医学. 18. 1246-1251 (2000)