2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10304047
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
中原 勝 京都大学, 化学研究所, 教授 (20025480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 千尋 京都大学, 化学研究所, 教務職員 (40293948)
岡村 恵美子 京都大学, 化学研究所, 教務職員 (00160705)
松林 伸幸 京都大学, 化学研究所, 助手 (20281107)
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Keywords | 超臨界水 / 亜臨界水 / 回転ダイナミクス / NMR緩和 / 速度定数 / ギ酸 / エーテル / 解離プロトン |
Research Abstract |
プロトン化学シフト測定によって決定された水素結合数は超臨界水の構造を特徴付ける静的な変数である。これに対して、化学反応の溶媒効果の理解のためには、反応分子種の周りの溶媒和の寿命を知ることがしばしば必要となる。そのとき、水が特異な効果をおよぼすとしたら、それは水素結合などを伴う異方性の強いものであるので、水分子そのものの回転ダイナミクスは、超臨界水中の溶媒和ダイナミクスの最も簡単なモデルとなる。本研究では、超臨界条件における水分子の回転ダイナミクスを取り上げ、重水(D_2O)を用いてD核のスピン-格子緩和時間の測定を行い、O-D軸の2次の再配向緩和時間を温度・密度の関数として決定した。そこでは、常温常圧下においてはピコ秒のオーダーであった回転ダイナミクスが、超臨界条件下では数十フェムト秒のオーダーに加速されることが見出された。また、超臨界温度一定条件下における再配向緩和時間の密度依存性は、化学シフト測定で得られた水素結合数よりも弱く、超臨界水構造の異方性の程度を動的に特徴付けることができた。 さらに、高温高圧水内化学反応として、ギ酸の水熱分解およびエーテルの脱水反応を速度論的に解析した。これらの反応は、常温常圧下では大量の触媒の存在下で進行するが、水熱条件下では、無触媒条件下で進行することを見出した。また、水熱条件においては、水のイオン積の増加に伴って水媒質の反応性が増えるという、巷間広く信じられている仮説を確かめるために、解離プロトン濃度を制御した速度論的解析を行い、水分子が中性のままで反応を促進することを証明した。なお、ここでは、工業的に重要な反応であるブタンジオールからのテトラヒドロフランの合成が、水熱条件下では触媒の存在なしで可能であることも示した。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Matubayasi N and Nakahara M: "Super- and Subcritical Hydration of Nonpolar Solutes.I.Thermodynamics of Hydration"Journal of Chemical Physics. 112. 8089-8109 (2000)
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[Publications] Matubayasi N and Nakahara M: "Theory of Solutions in the Energetic Representation.I.Formulation"Journal of Chemical Physics. 113. 6070-6081 (2000)
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[Publications] Bossev DP,Matsumoto M,and Nakahara M: "^<19>F NMR Study of Molecular Aggregation of Lithium Perfluorooctylsulfonate in Water at Temperatures from 30 to 250℃"Journal of Physical Chemistry B. 104. 155-158 (2000)
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[Publications] Matubayasi N and Nakahara M: "Association and Dissociation of Nonpolar Solutes in Super- and Subcritical Water"Journal of Physical Chemistry B. 104. 10352-10358 (2000)
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[Publications] Yamasaki Y,Enomoto H,Yamasaki N,and Nakahara M: "NMR Study of Hydrothermal Reactions of Dichloromethane with and without Alkali"Bulletin of the Chemical Society of Japan. 73. 2687-2693 (2000)
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[Publications] Matubayasi N,Nakao N,and Nakahara M: "Structural Study of Supercritical Water III.Rotational Dynamics"Journal of Chemical Physics. 114. 4107-4115 (2001)