Research Abstract |
噴霧火災中において,レーザーシート光による火災内の噴霧断層可視化と高空間分解能を有するカセグレン受光学系を用いた火災中の局所ラジカル自発光を同時に測定し,噴霧領域と燃焼反応領域の位置関係を調べた.また,位相ドップラ計(PDA)とラジカル自発光の同時測定を行い,火災中の局所の噴霧特性と燃焼反応強度の相互関係を調べた.さらに,噴霧火災中の流れ場計測と局所からのラジカル自発光計測を同時に行い,噴霧の消失速度および燃焼速度を求めた.その結果,以下の結果を得た.1.噴霧火災には,噴霧領域と燃焼反応領域が重畳した厚い反応帯が存在する.2.噴霧火災には予混合的な燃焼反応領域と拡散燃焼反応領域が存在する.3.噴霧の局所特性の空間的・時間的な変動により,火災伝ぱに最適な局所噴霧特性を有する噴霧領域を選択的に火災が伝ぱする. 実炉に用いられているガンタイプバーナに対してPDAシステムを適用し,非燃焼場における時間変動を伴う空間構造および粒径群毎の飛行特性の解析を行った.さらに燃焼場においては,流れ場の乱流の時間スケールを求め,噴霧火災構造と乱流の時間スケールの関係を明らかにした.この際に,PDAを燃焼場に適用した際の誤差要因についても評価を行った.一方,CCDカメラを用いた画像解析を併用することにより,特に,せん断流領域における噴霧火災構造と時空間スケールの解明を行った.また,PIVの噴霧場への適用性の検討を行った後,粒径毎の瞬時の空間的な速度分布情報を得るために,粒径検知型PIVの開発を行い,油滴径群毎の空間速度分布を把握することができた.これらの手法に,新規開発した局所火災発光計測システムを組み合わせることにより,噴霧火災中のOH及びCHラジカルの時間変動を捉え,液滴群挙動との相関を考察した. 燃料濃度の不均一性の化学種の生成,消滅に与える影響について調査するため,任意の燃料濃度場が作成できる定容容器を使用し,容器の中央に焼結金属製のフィルタを配置し,そこから燃料を供給し実験を行なった.計測にはNd:YAGレーザーとOPOシステムを使用し,LIF法,LII法を用いて生成化学種の可視化を行なった.これにより,NO,OHなどの化学種やすすの可視化を可能とした.撮影にはイメージ取り込みオプティカルシステム,バンドパスフィルター(本年度研究経費より購入)を用い,生成化学種の空間的分布計測を行なった.また,濃度の不均一性表す統計力学的なエントロピ理論で濃度の不均一性を4条件定義し,その4条件で常温・常圧場で実験を行った.そこで得られた画像から,本実験装置が十分な再現性を持った燃料濃度場を作成できることを確認し,濃度不均一場におけるOHラジカルとすす,NOxの関係についての情報を得た. 非定常噴霧の構造解析と燃焼機構(噴霧構造のモデリング)を行うため,KIVA-IIに組み込まれているTABモデル改良し,ピントル型インジェクタより噴射される液膜流の不安定性による分裂を考慮して,初期液滴径を決定し,燃料噴霧の分裂モデルの改良を行ない,自由噴霧領域におけるガソリン噴霧挙動の最適化を行なった.この結果,吸気管方式に関しては混合気の形成割合について,本研究で行なったKIVA-IIコードの最適化によりほぼ可能となった.また,単一成分の計算のみ可能なKIVA-IIコードを用いて軽油のような多成分混合燃料を取り扱うために,分割噴射方式のコンセプトを提案した.これは,N種類の燃料成分によって形成される多成分混合燃料液滴をN個の液滴に置き換えて,N個の液滴1つずつにそれぞれの燃料特性を与えることで多成分化し,多成分となることで生じる二相領域を計算上に考慮することで多成分燃料噴霧を模擬するものである.
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