Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 一雅 建設省, 土木研究所, 主任研究員
島崎 敬一 日本大学, 理工学部, 教授 (50162665)
竹内 佐和子 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (00302753)
野城 智也 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助教授 (30239743)
吉田 恒昭 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (20292881)
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Research Abstract |
本年度は,我が国の建設生産・管理システムに関する,制度,運用,および慣習について,現状の事実関係および過去の歴史的経緯を,欧米・アジア諸国との国際比較も見据えて,(1)法律・規則・政令・仕様書・技術基準等や既往の調査研究・報告等の文献資料収集調査 (2)アンケート調査 (3)インタビュー・聞き取り調査 (4)事務所・現場等の現地観察調査等の調査研究活動を行った。 研究成果から得られた主要な知見は,以下に示す通りである。 (1)我が国の建設現場の労働生産性,機械稼働効率等に関する生産性は,欧米諸国に比較して高いとはいえない。(2)発注者,施工者,コンサルタントの責任と権限分担の相互関係を,品質保証と労働災害の観点から照査すると,著しい片務性があり,それが,世間の悪評判(信頼性の低下)の原因の一つになっている。(3)ライフサイクルコストの算定手法を開発するための基本的枠組みは,十分に確立していない。(4)建設産業に関連する企業体の技術力と国際競争力は,情報通信利用および財務管理の分野で欧米諸国と比較して著しく低い。(5)政府の財政状況に問題がある我が国およびアジア諸国の健全なインフラ整備の一方策として,民間資金活用方式(コンセッション方式)について調査研究した結果,プロジェクトファイナンス,BOT,PFI等のインフラ整備手法の歴史的経緯と現状把握,共通認識できる理論的な基本的枠組みを構築し,我が国に導入する場合の問題点を明確にできた。(8)公共工事の調達システムへの会計検査制度と運用の影響を調査した結果,我が国は,欧米諸国で重視している有効性・効率性評価の視点がなく,合規性検査に偏っていることが明らかとなった。(7)公共工事の執行過程と官公需法による中小企業対策・雇用の創出の実態に関する調査研究の結果,ある公共工事において,効率性と中小企業対策・地域振興という相矛盾する事柄を同時に実現しようとしてきたことが世間の悪評判(信頼性の低下)の原因の一つになっていることが分かった。 これらの研究成果に基づき,我が国の建設生産・管理システムの信頼回復のための基本的な方策を構築することができた。その内容は,研究代表者による4つの道と題する幾つかの研究論文や評論として公表した。しかし,我が国の建設生産・管理システムの国際競争力の復権のための方向は,現時点においては未解明であり,2年度における主要な研究課題の一つである。
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