2000 Fiscal Year Annual Research Report
物理ゲルの微視的架橋構造並びに不均質性と巨視的物性の相関
Project/Area Number |
10305070
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
根本 紀夫 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 教授 (90027053)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 晃彦 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 助手 (20254427)
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Keywords | 顕微赤外吸収二色性 / 物理ゲル / 高分子フィルム / 球晶 / ポリプロピレン / 延伸 / 結晶性高分子 / 変形機構 |
Research Abstract |
本年は、主に、球晶を含んだポリプロピレンフィルムの変形機構およびイオノマーの溶液内の会合挙動についての検討を行った。 巨大球晶を含んだポリプロピレンフィルムフィルムを延伸しながら、巨大球晶およびそれを取り巻く微結晶部分の変形挙動について観察を行った。微結晶部では延伸に伴い高分子鎖が延伸方向に大きく配向した。一方、巨大球晶部では、ほとんど配向が生じず球晶が微結晶部に比べてかなり硬いことが示された。結晶構造に対応して変形機構も異なった。微結晶部では、降伏現象の終了直前まで無配向状態を維持するが、降伏が生じた直後(ひずみε≧1.5)に急に配向が生じ、その後延伸に伴い徐々に配向することがわかった。巨大球晶部では、それぞれの配向状態から、α-晶ではラメラの延伸・分離及び、圧縮・解きほぐれが結晶束ごとに生じており、αmix晶では親ラメラの変形に対して子ラメラが抵抗することにより配向しにくくなる。さらに、β晶はもろく、捩れたラメラの絡み合いがわずかな応力で解けるのであろうということが示唆された。α晶は微結晶とは比較的孤立した状態にあるのに対して、β晶では十分に微結晶と絡んでおり、球晶の結晶形態が変形機構に大きな影響を及ぼすことが明らかとなった。 金属イオンにより中和したイオノマーは、イオン錯体同士が凝集して会合体を形成する。ポリエチレンブチレンを主鎖としたテレケリックイオノマーを用い、イオノマーの溶液状態による会合体形成について検討を行った。デカリンを疎水性溶媒として用い、Mg^<2+>およびK^+を中和イオンに用いた。いずれの系においても低濃度では分子間で会合体を形成しており、濃度の上昇とともに会合体のサイズが大きくなり、10%前後の濃度を越えると系全体をつなぐ粘弾性網目が形成されることがわかった。粘弾性網目を形成した後の粘弾性挙動は、1価のK^+系では網目の組替えとイオンクラスタの運動と推測される2段階の緩和が生じたが、2価のMg^<2+>系では非常に広い緩和時間分布をもつ挙動を示した。これは、無極性溶媒中においてはMg^<2+>イオンのつくるイオンペアーは電離することができず、必ず2本一組での運動しか許されないためであると思われる。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] K.Nakasone et.al: "Symmetrical Ketone/n-Alkane Systems.1.Phase Diagrams from DSC"J.Physical Chemistry B. 104・31. 7483-7489 (2000)
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[Publications] K.S.Hossain et al.: "Rheological Study on Aqueous Solutions of Silk Fibroin"Proceeding of XIIIth International Congress on Rheology. 13・1. 368-370 (2000)
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[Publications] N.Nemoto: "Dynamic Viscoelasticity of telechelic poly (ethylene bytylene) ionomer"Proceeding of XIIIth International Congress on Rheology. 13・1. 371-372 (2000)
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[Publications] N.Nemoto: "Structure and Dynamics of Temporally Crosslinked Network"Proc The 10th Symposium on Dielectric and Advanced Matter Physics and The 3rd Pusan Workshop on Condensed Matter. 10・4. 1-1 (2000)
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[Publications] N.Nemoto: "Polymer Dynamics and Rheology"Polymer Year Book. 17. 371-372 (2000)
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[Publications] 山元博子 他: "鎖中央に側鎖をもつ長鎖アルカンの合成と結晶構造解析"九大総理工報告. 22・1. 6-15 (2000)
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[Publications] 根本紀夫: "レオロジー工学とその応用技術,第5章,希薄溶液の粘度挙動"フジテクノシステム. 12 (2000)
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[Publications] 根本紀夫: "レオロジー工学とその応用技術,第5章,濃厚溶液の粘弾性"フジテクノシステム. 6 (2000)