1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10306010
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
寺沢 実 北海道大学, 農学部, 教授 (50003124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 裕 北海道大学, 農学部, 助手 (50281796)
小島 康夫 北海道大学, 農学部, 助教授 (90161918)
船田 良 北海道大学, 農学部, 助教授 (20192734)
大谷 諄 北海道大学, 農学部, 教授 (30001465)
高橋 邦秀 北海道大学, 農学部, 教授 (80281707)
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Keywords | 樹液 / 溢出機構 / シラカンバ / 根圧 / Betula / Birch / タンパク質 / フラボノイド配糖体 |
Research Abstract |
1) 樹液の溢出挙動:美保町のシラカンバ純林での調査により、樹液溢出量には個体差の大きいことを認めたが、全体としての溢出変化は札幌など観察と一致した。地温が0℃を数える時点で溢出が開始することが推定された。溢出量と気温とは相関が見られた。一日の経時変化の存在を認めた。 2) 樹液の化学分析:タンパク質に、コーン・亜麻などで見い出されている抗菌性タンパク質を相同性が高いタンパク質を検出した。溢出樹液の採取による根の液透圧ストレスにより誘導された可能性がある。 3) 細胞微細構造:日本産クバノキ属三種において、道質分布、導管壁孔の構造や分布に違いがある。 4) 道導組織に細胞化学的観察:送管の形成は梢から始まり順冶下に下っていくことが分った。したがって、水分は、前年度までに形成された導管を通て上昇していることが推定された。 5) 樹木の化学成分:葉の含有成分にリグナン・セスキテルペン・p-ハイドロキシフニール溶導体・フラボノイド類の配糠体の存在を明らかにした。日本産カバノキ属の三種は化学成分によって識別が可能である。 6) 最大枝までの高さ、杉〓高胸高直径から算出される葉の生産量と樹液溢出量とに相関のあることを明らかにした。胸高直冬のみでは、相関はあまり高くなかった。 7) 根の歪測定より、樹液溢出時期における根の膨張のあることを認めた。樹幹圧が生じているか否かについての確課がまだ得られていない。 8) 水分分布:秋まで存在していた水分が冬期には導管から消えること(キャビテーション)樹液が溢出すと時期には、キャビテーションは回復していることを、クライオセム観察で明らかにした。根から水分が供給されることや凍結の解除により、キャピテーションが回復するものと推定された。凍結時に導管内の水は、周囲の繊維細胞に移動した。 9) シラカンバの樹液溢出現象について全面的に判明した訳ではないが、いくつかの新しい事実により、溢出機構が推定されていたように根の働きの強さに依存していることがより明確になりつつある。
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