1998 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮細胞由来一酸化窒素の産生抑制によって生じる血管構築の分子機序の解明- 標的分子の抑制による生体レベルでの病態解析 -
Project/Area Number |
10307019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
竹下 彰 九州大学, 医学部, 教授 (30038814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江頭 健輔 九州大学, 医学部, 講師 (60260379)
上野 光 九州大学, 医学部, 講師 (50260378)
下川 宏明 九州大学, 医学部, 助教授 (00235681)
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Keywords | 一酸化窒素 / アンジオテンシン変換酵素 / アンジオテンシンII / 動脈硬化 / 組織因子 |
Research Abstract |
NO合成阻害薬(Nω nitro-arginine methyl ester、L-NAME)を実験動物(ラット、ブタ)に4週間投与すると、7日以内に血管壁の炎症性増殖性変化が生じ、28日以降には血管壁再構築(血管壁肥厚、線維化)が生じることを報告した。平成10年度には、このモデルにおける血管壁再構築の分子機序について以下の成果を得たので報告する。 1. 炎症性増殖性変化.正常ラットにNO合成阻害薬(N^<ω->nitro-L-argini ne methyl ester.L-NAME)を投与すると、7日以内に冠血管壁に炎症性変化{単球の浸潤、monocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)産生、myofibroblast出現、など}、増殖性変化(PCNA陽性細胞の増加)、が生じた。28日以降に血管壁の構築異常が生じた。 2. 酸化ストレスの増加.内皮NO産生抑制によって血管壁からの活性酸素種の産生が増加した。 3. 局所アンジオテンシン系の活性化とその重要性 局所ACE活性は上記炎症性変化や酸化ストレスの増加とほぼパラレルに増加した。血清ACE活性は全く変化しなかった。上記炎症性増殖性変化、MCP-1発現、NF-kB活性化などはすべてangIIAT1受容体拮抗薬によって抑制された。この成績から、局所angII系のが内皮NO産生抑制による血管壁再構築に中心的役割を果たすことが明らがとなった。 4. NF-kBならびにMCP-1の重要性.「decoy strategy」を用いてNF-kBの機能をブロッククすると上記炎症性増殖性変化とMCP-1発現増加が抑制された。また、MCP-1中和抗体によって炎症性増殖性変化が抑制できた。したがって、局所angII→酸化ストレス→NF-kB→MCP-1発現増加が内皮NO産生抑制による血管再構築の分子機構の中心経路である。 結論.内皮NOは局所angII系の機能を抑制することによって血管壁の病的再構築を抑制することが明らかとなった。内皮NOの抗動脈硬化作用はこの機構によってもたらされている可能性がある。NO産生抑制によって局所angII活性が増加する機序は不明であり今後の研究課題である。内皮NO活性を保つことが高血圧症や虚血性心疾患の治療法として有用と考えられる。
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[Publications] Tomita H, et al.: "Early induction of transforming growthfactor-β via angiotensin ll type 1 receptorcontributes to cardiac fibrosis induced bylong-term blockade of nitric oxide synthesisin rats." Hypertension. 32巻. 273-279 (1998)
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[Publications] Tomita H, et al.: "Inhibition of nitric oxide synthesisinduces inflammatory changes and monocytechemoattractant protein-1 expression in rathearts." Arteriosclerosis and ThrombosisVascBiol. 18巻. 1456-1464 (1998)
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[Publications] Usui M, et al.: "Regulation of angiotensin II receptorexpression by nitric oxide in rat adrenalgland." Hypertension. 32巻. 527-533 (1998)
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[Publications] Katoh M, et al.: "Cardiac angiotensin II receptors areupregulated by long-term inhibition ofnitric oxide synthesis in rats." Circ Res. 83巻. 743-751 (1998)