2000 Fiscal Year Annual Research Report
嗅細胞匂い情報変換システムの定量的理解に関する研究
Project/Area Number |
10308035
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
倉橋 隆 大阪大学, 大学院・基礎工学研究科, 教授 (90225251)
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Keywords | 嗅細胞 / 活動電位 / ホールセルパッチクランプ法 |
Research Abstract |
嗅覚の匂い情報変換機構は、まず嗅粘膜内の嗅細胞が受容器として匂い刺激に応答し脱分極の受容電位を生じることで始まる。嗅細胞内で複雑なトランスダクションを経て発生した緩電位は閾値を越えると軸索小丘(axon hillock)で活動電位を生じ軸索を非減衰的に伝導しながら嗅球へと匂い情報が伝達される。活動電位の発生頻度と継続時間は嗅細胞に与えられた刺激の強度と持続時間に依存する。このような嗅細胞の匂い情報変換機構はこの十数年の研究により飛躍的に解明されてきた。しかし嗅細胞に対するホルモンの効果や匂い物質による匂い応答電流の抑制のメカニズムなど未だ解明されていない現象も多い。また、活動電位発生機構に関しては、未だ詳細な研究がなされていない。 本研究では、カエル嗅粘膜内の細胞を対象にホールセルパッチクランプ法を用いて電気生理学的特性の解析を行った。現在主流である単離嗅細胞の実験では、単離過程で嗅細胞の軸索が損傷され、活動電位発生に影響を与えてしまう。また、単離支持細胞での実験は困難である事も知られている。そこで嗅粘膜スライス標本を開発し、軸索の損傷のない生きたままの嗅細胞と支持細胞からの記録を得ることができ、さらにその細胞の形態を観察することができた。 特に、電流注入によって、嗅細胞から連続した活動電位発生が見られた。シリアでの匂い情報変換は、非線形的な増幅過程であることが明らかとなっている。しかし、今回の研究によって、活動電位発生は線形な機構によることが示唆された。 今後、このスライス標本を用いて、活動電位発生機構についてのより詳細な研究を行うことが必要である。
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