Research Abstract |
高速滑走艇は,前進速度に伴う動的流体力を利用して船体を浮上させて航走しており,この動的流体力の全流体力に占める割合は非常に大きい.特に,滑走艇の操縦運動時には動的流体力が大きく変化し,平水中においてもこの動的流体力の特性に起因すると考えられる従来の排水量型船舶には見られない特有の不安定現象が存在する.例えばスラロームなどの周期的操縦運動や微小な船首揺れに伴う上下揺れと縦揺れの大振幅動揺(コークスクリュー)や,高速旋回時の横流れに伴う上下揺れと縦揺れ(旋回ポーポイジング,横ポーポイジング)などである.しかしながら,滑走艇の操縦性能についての研究例は少なく,操縦運動に伴う不安定運動については明らかでなく,さらに実験的,理論的に研究を行う必要がある. 本年度は,スラロームのような周期的操縦運動が船体運動(上下揺れ,縦揺れおよび横揺れ)に及ぼす影響を調査するために,上下揺れ,縦揺れおよび横揺れを自由にした模型船に,正弦的な左右揺れおよび船首揺れを強制的に与えて曳航するPMM試験を行い,その時に発生する船体運動の計測を行った.その結果,ある条件下において激しい連成運動が発生することが確認された.この原因を明らかにするために,操縦運動時に船体に働く流体力の計測を行い,さらに計測した流体力を用いたシミュレーション計算によりその運動が発生することを確認した. さらに,旋回時の横流れに伴って生じる横ポーポイジングについて,模型船の上下揺れ,縦揺れ,横揺れを自由にして前進速度と横流れ角を系統的に変化させて曳航し,横流れ角の小さい場合には安定した姿勢での航走,横流れ角が大きくなるに従い小振幅運動が発生し,さらに横流れ角が大きくなると上下揺れ,縦揺れ,横揺れの大振幅運動が発生することを確認した.また,大振幅運動発生時の上下揺れ,縦揺れ,横揺れの復原力を計測した結果,横揺れと上下揺れおよび縦揺れと上下揺れの連成原力係数がお互いに異符合となっており,計測された横ポーポイジングは,復原力係数行列に連成をもつ多自由度振動系における自励振動である可能性を示した.
|