2000 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質の不可逆的な構造変化を解析するための時間分解赤外分光器の開発
Project/Area Number |
10358016
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
神取 秀樹 京都大学, 大学院・理学研究科, 講師 (70202033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 辰彦 日本バイオラッドラボラトリーズ(株), 分析機器, 課長
茂木 立志 東京大学, 大学院・理学研究科, 助手 (90219965)
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Keywords | 赤外分光 / ステップスキャン法 / 時間分解法 / バクテリオロドプシン / オキシデース / レーザー / ダイナミクス / 不可逆過程 |
Research Abstract |
本研究においては、蛋白質の構造変化を記述するための一般的なツールとして赤外分光法を位置付けるために、不可逆的な反応が測定可能な時間分解の赤外分光器を開発することを目指した。そのために民間企業の研究部門に所属する研究者を含む有機的な研究体制を組織し、特に「繰り返し反応」の測定に限定されてきた時間分解FTIR法を「不可逆(シングルターンオーバ)反応」に発展的に応用するために不可欠な測定系を開発した。具体的には、ステップスキャン時間分解赤外分光器、赤外顕微鏡、自動ステージを組み合わせた装置を作製し、レーザーによる光励起と同期して時間分解赤外スペクトル変化を測定するためのシステムを構築した。本装置により、不可逆な反応過程における構造変化の解析が可能になった。 さらに本年度においては、不可逆反応の代表的な蛋白質分子である視物質ロドプシンに対してフェムト秒蛍光分光法を適用し、励起状態における異性化反応過程を明らかにした。同様に視物質の中で色覚を担う赤感受性色素や緑感受性色素をニワトリの網膜から単離、精製し、水和フィルムに対する赤外分光から、発色団レチナール分子の異性化に伴う蛋白質の側の構造変化を明らかにした。赤感受性色素であるアイオドプシンの実験結果からは、赤色領域の吸収を実現するために、塩素イオンは発色団レチナール分子に対して電気双極子として作用していることがわかった。 また偏光赤外分光を用いたバクテリオロドプシンの研究、細菌の光センサーであるイエロープロテインの研究を行った。
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Research Products
(16 results)
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[Publications] Kandori,H.: "Local and Distant protein Structural Changes upon Photosomerizations of the Retinal in Bacteriorhodopsin"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 97. 4643-4648 (2000)
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[Publications] Kandori,H.: "Water Structural Changes Involved in the Activation Process of Photoactive Yellow Protein"Biochemistry. 39. 7902-7909 (2000)
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[Publications] Maeda,A: "Relocation of Internal Bound Water in Bacteriorhodopsin during the Photoreaction of M at Low Temperature : An FTIR Study"Biochemistry. 39. 10154-10162 (2000)
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[Publications] Kandori,H.: "Direct Observation of the Bridged Water Stretching Vibrations inside a Protein"J.Am.Chem.Soc.. 122. 11745-11746 (2000)
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[Publications] Kandori,H.: "Role of Internal Water Molecules in Bacteriorhodopsin"Biochim,Biophys,Acta. 1460. 177-191 (2000)
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[Publications] Hirano,T.: "Chloride Effect on Ioclopsin studied by Low-Temperature Visible and Infrared Spectroscopies"Biochemistry. 40. 1385-1392 (2001)
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[Publications] Kandori,H.: "Excited-State Dynamics of Rhodopsin Probed by Femtosecond Fluorescence Spectroscopy"Chem.Phys.Leff.. 334. 271-276 (2001)
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[Publications] Kandori,H.: "Tight Asp85-Thr89 Association during the Pump Switch of Bacteriorhodopsin"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 98. 1571-1576 (2001)
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[Publications] Imai,H.: "Difference in Molecular Structure of Rod and Cone Visual Pigments Studied by Fourier Transform Infrared Spectroscopy"Biochemistry. 40(in press). (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "ロドプシンの光反応ダイナミクス"物性研究. 75. 752-766 (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "プロトンを能動輸送するためのタンパク質の「動き」:バクテリオロドプシンの中間体構造からわかったこと"現代化学. 1月号. 55-57 (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "タンパク質分子ポンプのダイナミズム"日本物理学会誌. 2月号. 75-82 (2001)
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[Publications] 神取秀樹: "季刊化学総説「超高速化学ダイナミクス(ピコ・フェムト秒領域の化学)」"日本化学会. 11 (2000)
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[Publications] 山崎洋一: "シリーズ・ニューバイオフィジックスII「ポンプとトランスポーター」"共立出版(日本生物物理学会 編). 15 (2000)
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[Publications] 神取秀樹: "バイオサイエンスの新世紀:第7巻生体膜のエネルギー装置"共立出版(日本生化学会 編). 13 (2000)
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[Publications] 神取秀樹: "生体とエネルギーの物理:生命力のみなもと"裳華房(日本物理学会 編). 29 (2000)