1999 Fiscal Year Annual Research Report
概念達成障害の神経心理学的評価とリハビリテーションに関する研究
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10410023
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
利島 保 広島大学, 教育学部, 教授 (20033566)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮谷 真人 広島大学, 教育学部, 助教授 (90200188)
中邑 賢龍 香川大学, 教育学部, 助教授 (70172400)
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Keywords | 概念達成障害 / 神経心理学的評価 / 認知リハビリテーション / 脳損傷者 / 弁別移行学習 / 認知過程 / 部分呈示法 / 拡大と代行のコミュニケーション |
Research Abstract |
本年度は2つの研究を計画・実施した。第1研究は、要素呈示条件下における脳損傷者の対象認知障害に関する研究で、左右いずれかの大脳半球部位に脳血管障害をもつ患者群と健常成人群の3群を対象に、具体物線画をパソコンの画面に分割呈示する要素呈示条件の下で、刺激対象の命名認知をさせる課題を実施した。その際、対象認知に関わる認知過程のトップダウン情報としての親近性や有意味性を、各群の被験者が具体物線画の画素の統合に利用する可能性の有無や対象認知不全特性と損傷部位の関係について、反応感度の指標(A'値)を測度として検討した。その結果、ランダム要素呈示条件下では、両損傷群は健常群より対象認知が困難で、右半球損傷群の遂行が左半球損傷群より劣ることから、右半球が対象認知の時空間的統合に関わることが示唆された。また、両損傷群とも要素統合にトップダウン情報の利用が可能だが、要素呈示の時間間隔の長短に遂行成績が左右されることから、視覚的ワーキングメモリーの障害があることが示唆された。 第2研究は、左右並びに両側の半球に脳血管障害を持つ患者の概念獲得過程に現れる障害特性に関する研究で、弁別移行学習課題として、四角形を刺激に色と大きさを適切概念に色とした課題。色づけした具体物の線画を刺激に食物カテゴリーと色とした課題、2つの抽象的な模様と形をそれぞれ持つ線画を刺激とした課題の3種を用いた。原学習で被験者が基準に到達した直後、同じ刺激を用いた移行学習を実施した。移行学習には次元内移行学習(ID)と次元外移行学習(ED)を設けた。その結果、どの被験者も学習に成功した課題は,具体物を用いた色のIDと抽象図形を用いたIDであり、脳損傷者は同じ学習方略を用いる課題でも、学習の遂行の難易が刺激材料に依存し、刺激特性と損傷部位の認知過程の関連を検討する必要があることが示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Sicasaki,M.,Toshima T.: "Dysfunction in visual object Recogeution of Patients Brain Damage Under the Element Presentation Condition"Journal of Chnical and Experimental Neuropsychology. 21,3. 316-324 (1999)
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[Publications] 橋本優花里,利島保: "概念達成課題を用いた神経心理学的評価の展望"広島大学教育学部紀要 第1部(心理学). 47. 1-7 (1999)
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[Publications] 永山ハツ子,吉田弘司,宮谷真人,利島保: "表情と人物の一致が顔の認知に及ぼす効果・評定および継時的異同判判"基礎心理学研究. 17・2. 111-115 (1999)
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[Publications] 中邑賢龍,塩田佳子: "こころリソースブック 1999-2000年版"こころリソースブック出版会. (1999)