社会的知性としての信頼――信頼の社会的背景と心理プロセスに関する総合的研究

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10410029
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 山岸 俊男 北海道大学, 文学部, 教授 (80158089)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 山岸 みどり 大阪国際大学, 経営情報学部, 教授 (20211625) ; 大沼 進 北海道大学, 文学部, 助手 (80301860) ; ミラー アラン 北海道大学, 文学部, 教授 (00281767)
• Keywords: 社会的知性 / 信頼 / 社会的不確実性 / コミットメント関係 / 機会費用 / 取引費用 / 集団主義 / 社会的交換

Research Abstract

本研究の最終的な目的は、(1)これまでの研究の中で示唆されてきた信頼と社会的知性との関係を明確化すると同時に、(2)信頼を支える社会的知性が信頼以外のどのようなこころの特性を支えているのか、また(3)社会的知性のタイプと社会関係の性質との間に如何なる関係が存在するかを明らかにすることにある。これらの目標の達成に向け、平成11年度には、(1)関係非拘束的行動予測の正確さ、関係拘束的行動予測の正確さ、他者の表情認知の正確さ、集団内部での人間関係認知の正確等の、社会的知性の各種の指標作りの作業が進められた。また、(2)相互依存関係における本人の協力・非協力行動、他者から協力される程度等の、社会関係における行動と、(1)で測定された社会的知性の各種の指標との関係が検討されると同時に、(3)対人関係スキル、共感性などのいくつかの心理指標との関連が検討された。本年度に実施された上述の諸研究は、その多くが実験室実験として実施された。これらの実験研究の目的は、主として社会的知性の各種の指標の妥当性を検討することにあったが、同時に、社会関係スキルや共感性を測定するための心理尺度の妥当性を明らかにする効果も持っている。また平成11年度には、これまで社会的知性とは独立に研究されてきた社会的交換ヒューリスティックスが、社会関係における適応戦略の基本枠組みを構成している可能性のあるとの理論的な可能性が提出され、この理論的な可能性を検討するための一連の実験研究が開始された。社会的交換の性質(例えば限定交換と一般交換)に応じて、活性化される社会的交換ヒューリスティックスのタイプが異なるという観点から、新たな理論展開の可能性が拓かれた。

Research Products

• [Publications] Toshio Yamagishi, Masako Kikuchi & Motoko Kosugi: "Trust, gullibility and social intelligence"Asian Journal of Social Psychology. 2・1. 145-161 (1999)
• [Publications] 高橋伸幸,山岸俊男: "一般交換システムの自発的形成-選別的利他行動に関する実験研究"心理学研究. 70・1. 9-16 (1999)
• [Publications] Nahoko Hayashi, Elinor Ostrom, James Walker and Toshio Yamagishi: "Reciprocity, trust, and the sense of control : A cross-societal study"Rationality and Society. 11・1. 27-46 (1999)
• [Publications] Toshio Yamagishi, Nobuhito Jin and Toko Kiyonari: "Bounded generalized reciprocity : Ingroup favoritism and ingroup boasting"Advances in Group Processes. 16. 161-197 (1999)
• [Publications] 王飛雪,山岸俊男: "信任的中、日、美比較研究"社会学研究. 80・2. 67-82 (1999)
• [Publications] 山岸俊男,小杉素子: "社会的交換における裏切り者検知"認知科学. 6・2. 179-190 (1999)
• [Publications] 山岸俊男: "一般的互酬性の期待としての集団主義文化"組織科学. 33・1. 24-34 (1999)
• [Publications] 山岸俊男: "安心社会から信頼社会へ-日本型システムの行方"中央公論新社. 253 (1999)