1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10410048
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小川 全夫 九州大学, 大学院・人間環境学研究科, 教授 (40041016)
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Keywords | 高齢者 / 地理的移動 / 地域再組織化 / 高齢者保健福祉計画 / 政策アカウンタビリティ / 公的介護保険制度 / リタイアメントコミュニティ / サービス評価 |
Research Abstract |
日本の社会は、若年人口を中心に向都離村させながら、地域社会を再編してきた。その結果、農村には高齢者のみが残されるという地域人口高齢化が生じて、「デ・ファクトの高齢者コミュニティ」という状況を生み出してきた。ところが、近年都市において増大する高齢者人口が、定年後、これまで住んでいた地域とは異なる地域に移動して、生活し始める現象が生まれている。この現象については、定年帰農や新田舎暮らしや介護移住や呼び寄せ介護などという概念で語られるようになっている。こうした事実を全国市町村の1990年センサスと1995年センサスの向老期世代のコーホートによって分析した。さらにこの分析の結果、高齢者の転入超過が想定できる571市町村を抽出し、行政の企画担当が、この事実をどのように把握して、どのように地域計画に反映しようとしているのかについて、質問紙による郵送調査を行った。その結果、2月15日時点で307の回答を得た。結果を分析すると、一方で向老期高齢者の転入超過が、必ずしも地方自治体に認識されていなかったり、一時的で、特異の現象として認識されていることが多いことがわかった。しかし他方でこれを地域課題として認識している自治体もある。アメリカにおける退職者コミュニティの成立の先進事例を考えると、日本でも、今後高齢者の地理的移動は新しい地域再組織化の課題を提起することが充分に考えられる。平成12年度から導入される自治体が保険者となる公的介護保険制度のもとでは、市町村ごとの高齢者サービスに大きなばらつきが見られることは避けがたく、すでに一部の自治体では高齢者の転入超過について防衛的な動きも出ている。こうした課題を解決するための取り組みについて、さらに調査を進める準備に入っている。
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Research Products
(1 results)