1999 Fiscal Year Annual Research Report
福祉教育・ボランティア学習の構造と実践に関する総合的研究
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10410076
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Research Institution | National Institute for Educational Policy Research |
Principal Investigator |
菊地 栄治 国立教育研究所, 教育経営研究部, 主任研究官 (10211872)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 隆二 東洋大学, 文学部, 教授 (30030563)
永田 佳之 国立教育研究所, 国際研究協力部, 研究員 (20280513)
山本 慶裕 国立教育研究所, 生涯学習研究部, 室長 (50135646)
夏秋 英房 聖徳大学, 短期大学部, 助教授 (30237573)
横田 正雄 国立精神・神経センター, 精神保健研究所・社会復帰相談部, 室長 (10182700)
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Keywords | 福祉教育 / Well-being / フリースペース / 近代 / 自己変容 |
Research Abstract |
本年度も昨年度に引き続いて、理論的な研究と実践事例の分析を通じて、これまでの福祉教育の理論と実践の基本的な枠組を整理した。さらに、今年度は民間の福祉教育の実践に関する質問紙調査を実施し、学校制度を超えた取り組みの可能性について検討を加えた。 まず、福祉教育の定義はさまざまな形で展開されてきたが、正義論や厚生経済学の領域でもWell-beingへというシフトが重視されていることを確認した。一連のレビューを通じてこれからの福祉教育研究には、<近代>としっかりと向き合うことが必要であると考え、理論的な整理を行った。福祉を「関係」という視点から捉え直し、「関係」の反福祉的状況を認識し自省し、それぞれの場で新しいかかわり方(自己変容)へとつなげられることが課題である。これまでの福祉教育実践の多くが継続性や拡がりの点で弱点を抱えていた原因のひとつは、福祉教育研究(あるいはボランティア学習論)に根源的な世界観の転換が伴っていなかった点にある。 複数の中学校・高校の教育実践についてフィールドワークを実施し、福祉教育とボランティア学習の現代的な構造を暫定的に整理するとともに、民間の居場所の調査を実施した。その中で、とりわけ「フリースペース」と称される居場所は、「福祉教育」のあり方を考える上で、きわめて大きなヒントを与えてくれることを見出した。(1)保護者が運営に参加することで「子どもをこうする」という世界観を相対化していること、(2)貨幣というメディアをできるだけ媒介させないことで互恵的な関係を維持していること、(3)受け入れる条件を設けず「多様な存在」から学ぶ機会を奪っていないこと、(4)ボランティア・スタッフとしてかかわることで「親子関係」「教師・生徒関係」から抜け出て大人自身の変容の可能性の芽をつみ取っていないこと、などの特徴が浮き彫りになった。
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