1999 Fiscal Year Annual Research Report
宋元時代華南地域社会の変貌-民族・物流・権力・秩序-
Project/Area Number |
10410088
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Research Institution | TOKYO METOROPOLITAN UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐竹 靖彦 東京都立大学, 人文学部, 教授 (90032698)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植松 正 京都女子大学, 文学部, 教授 (10036030)
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Keywords | 福建 / 建州 / 汀州 / 物流 / 塩専売 / 土豪 / 胥吏 / 客家 |
Research Abstract |
巨視的に見て、唐宋の間は華中・華南の少数民族の社会が大量の華北からの客来戸を受け入れ、その影響の下に急速に漢化した時期であった。本研究においては、宋代の福建地域を対象として、客来戸の定着の基盤としての地域の物流と公的秩序を分析した。福建地域は少数民族の抵抗と地域の交通条件の厳しさのために、他の地域においては王朝の専売政策の対象であった諸物資の私的生産と流通が大幅に認められていた。特に塩流通の場合には汀州を中心として、客来の小民が集落全体の公的事業としての塩流通を担い、福建から広東にかけて客家のコロニーが塩流通の線上に成立した。それは原住民=土戸との敵対的な関係のなかでの行為であったため、この地域においては、現代に至るまで客来者は客家として特殊な存在であり続けた。これに対して、福建のその他の地域においては客来の土豪が、他の地域では専売品であった鉄、酒そして部分的には茶等の生産を黙認され、同時にこれらの商品や塩の流通の主体となっていた。その一方で、かれらは地域の秩序を把握し、王朝の行政機構を媒介として少数民族地域との和合的関係を築き上げた。汀州以外の福建諸地方の開発の主体はこれた土豪に率いられた華北の客来戸であったが、こうした関係のなかで土戸と客来者の融合が進行し、これらの地域においては客家層は形成されなかった。このことは客来戸の定着の過程に起因する要因によって、かれらが一種の公的存在となった基礎にある事態である。このような役割を果たした土豪は名家としての尊敬を受け、自身は地域から離れて科挙官僚となった。しかしまた、この地域の悪逆の土豪たちはしばしば逆に王朝の行政機構の私的に乗っ取って、地域の領主的存在になった。最近発見され、大きな注目を集めている明刊本清明集において、胥吏と結託した土豪の領主的変貌のもっとも典型的な事例が福建北部の建州に集中しているのはそのためである。
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