1999 Fiscal Year Annual Research Report
文学的パラダイムとしての帰属意識-ドイツ文学に見るアイデンティティ創出機能
Project/Area Number |
10410104
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井上 修一 筑波大学, 文芸言語学系, 教授 (10017634)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 隆道 筑波大学, 現代語現代文化学系, 助教授 (10197254)
上田 浩二 筑波大学, 現代語現代文化学系, 教授 (30063796)
相沢 啓一 筑波大学, 文芸言語学系, 助教授 (80175710)
濱田 真 筑波大学, 現代語現代文化学系, 講師 (50250999)
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Keywords | ナショナル・アイデンティティ / ナショナリズム / 国民文学 / ゲーラ時代 / ナショナリズム意識の広がりと変質 / ナチズム / ヴィーン |
Research Abstract |
本科研プロジェクトも二年目を終了し、一年目に収集した基礎的文献に基づいて各メンバーが各自の関心領域で研究を深めることができた。ドイツ文化圏におけるナショナル・アイデンティティをめぐるディスクールがいくつかのターニング・ポイントを経て変質しているという仮説の下で、濱田はヘルダーに代表される18世紀の国民文学的視点の成立期について現在までつながるナショナリズムの原点を確認する作業を行い、武井はフランス革命からナポレオン占領期のいわゆる「ゲーテ時代」における政治意識がロマン派などの文学に対して及ぼした影響を考察し、上田は19世紀後半から20世紀前半におけるナショナリズム意識の広がりと変質を考察し、相澤はナチズムの問題に関して「健全」とされる「良きナショナリズム」とナチズムに代表される「悪しきナショナリズム」の区分に潜む問題をとりあげ、また井上は19世紀に独自の文化的モデルネを形成していったヴィーンにおける民族的・文化的アイデンティティの問題を扱う、という形で、各自のテーマ毎に考察を深めていった。全員が顔を合わせる研究会に関しては、ヴィーンに関する問題圏に関して6月に検討会、また全体の進行状況の確認討論を9月に催した以外は、相澤の10月から半年間の渡独という事情もあり、一年目に比べてやや少なかったが、それぞれの問題関心については、ドイツにおける研究情報やオーストリアにおける新たなナショナリズムの台頭なども含め、Eメール等により密接かつ頻繁に情報交換をすることができ有意義であった。 来年度はプロジェクト最終年であり、これまで通りの各自の研究に加え、ドイツから研究者を迎えての研究発表会も既に予定されており、最終的な出版物が本研究プロジェクトの問題意識を反映した一貫性のあるものとなるよう、本年度までの各研究成果を持ち寄って相互に批判・検討を加え議論する会合を4月から定期的に行なってゆく予定である。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 相澤 啓一: "Landeskunde als Lernmotivation."Spracherwerb Deutsch in Ost und Zentralasien. (1999)
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[Publications] 井上 修一: "明治の学者・足立文太郎"天城湯ヶ島町編 天城湯ヶ島ふるさと叢書. 第9集. 21-27 (2000)
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[Publications] 井上 修一: "ホーフマンスタールのユダヤ性"筑波大学文芸・言語学系『文芸・言語学研究 文芸編』. 37号. (2000)
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[Publications] 上田 浩二: "翻訳論の試み一日独間の文化交渉をめぐって"早川東三先生古希記念論集. 327-348 (1999)
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[Publications] 上田 浩二: "ブレヒトにおける否定的な世界-「隠されているもの」・「見出すこと」の意味"筑波大学現代語・現代文化学系『言語文化論集』. 51. 47-64 (1999)
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[Publications] 上田 浩二: "オーストリア-ウイーンとよそもの"総合研究開発機構(NIRA)政策研究:世界の都 その生い立ちと今の問題. 50-53 (1999)
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[Publications] 上田 浩二: "Wunschbild Deutschland-ein japanischer Blick."Deutschland von aussen-Begleitbuch zur Ausstellung 19.11-26.3.. 22-23 (1999)
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[Publications] 武井 隆道: "Ballet d'action の概念・演劇性とパントマイム(第47回日本舞踊学会春季学会発表レジュメ)"舞踏学会 舞踏学. 第22号. 122-123 (1999)
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[Publications] 濱田 真: "スピノザとヘルダー - 「存在の連鎖」受容の-側面-"RHODUS Zeitschrift fur Germanistik. 16. 3-14 (2000)
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[Publications] 濱田 真: "ヘルダーにおける複眼的思考の言語態-『イデーン』にみられる概念連鎖を手がかりとして-"筑波大学現代語・現代文化学系『言語文化論集』. 53. (2000)
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[Publications] 濱田 真: "近代ドイツのおけるBildung概念の変容-啓蒙主義から新人文主義への移行期を中心にして-"筑波大学現代語・現代文化学系 言語文化論集. 51. 69-94 (1999)
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[Publications] 濱田 真: "Herders Bildungs-und Wissenschafistheorie als System bequemer Verhaltnisse"日本ヘルダー学会 ヘルダー研究. 第5号. 51-68 (1999)