1998 Fiscal Year Annual Research Report
国語、国史、国有法--法におけるナショナルな自己意識の成立と展開
Project/Area Number |
10420001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小川 浩三 北海道大学, 法学部, 教授 (10142671)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 紫郎 国際日本文化研究センター, 教授 (00009797)
村上 淳一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (80009795)
山田 欣吾 共立女子大学, 国際文化学部, 教授 (70017523)
成瀬 治 東京大学, 名誉教授 (70011278)
石川 武 北海道大学, 名誉教授 (20000648)
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Keywords | 概念史 / 国制史 / 比較史 / 言語 / 共通モデル / 帝政後期ローマ / 固有の法制度 / ナショナルな法意識 |
Research Abstract |
初年度にあたって、研究視角の明確化をはかるために、特定の時代、特定の地域、特定の問題について個別研究の報告をえ、全体の討論によって、それを異なる時代、異なる地域と比較すべく努めた(比較史)。都合二度の全体合宿研究会で、報告されたテーマは、以下の通りである。18世紀プロイセンの理性法およびランド法におけるFamilie、19世紀ドイツ諸都市における都市の類型と市民意識に関する最近の研究動向、中世教会法およびローマ法学におけるaccusatioとinquisitio、皇帝カール4世のプラハ宮廷と標準ドイツ語、ヨーロッパ諸言語における「官吏」・「官庁」対応概念の史的研究、帝政後期ローマにおける警察組織の形成、中世の法と国制--ザクセンシュピーゲルの場合などである。方法的には、概念史や国制史の手法を用いて、共通の概念をもちながら、その意味付与においてさまざまに異なっていること、その際の国制史的背景が討論を通じて次第に明らかにされつつある。今年度の成果として特筆すべきは、十分な研究蓄積がなかった古代末から中世初期について史料的な検討がなされ、いわば横のつながりの共通モデルとしてのポリスに対して、縦の官憲的なつながりの共通モデルとしての後期ローマ帝政の意義が確認されたことである。たとえば、inquisitioは、ローマ共和政末の刑事手続の中で萌芽的に認められた、宣誓の上で証言させるという手続が、帝政期のローマで成熟・完成し、それが中世の諸国家、教会を通じて保存されて、中世中期以降、大陸では糾問主義手続、イングランドでは陪審裁判へと発展していった。近世・近代のイングランド人は、周知のように、陪審制を固有の法制度として捉え、陪審制はナショナルな法意識の形成に決定的な意味をもった。これは一例にすぎないが、個別研究、討論を通じて得られた問題視角をより深めて行くことが、次年度の課題である。
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Research Products
(27 results)
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[Publications] 小川浩三: "(書評)源河達史「グラーティアーヌス教令集における宣誓と偽誓(一)(二・完)」(『法学協会雑誌』113巻6、7号)" 法制史研究. 47号. 360-364 (1998)
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[Publications] 小川浩三: "解説『ヨーロッパ法史入門』註解" クヌート・W・ネル/村上淳一訳「ヨーロッパ法史入門--権利保護の歴史」(東京大学出版会). 147-190 (1998)
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[Publications] テオドシウス法典研究会: "(翻訳)テオドシウス法典(Codex Theodosianus)(8)" 立教法学. 50号. 336-353 (1998)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲルにおける裁判(権)" 北大法学論集. 49巻1号. 1-58 (1998)
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[Publications] 石川 武: "中世法の規範構造--ザクセンシュピーゲルの場合--" 北大法学論集. 49巻3号. 497-536 (1998)
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[Publications] 石川 武: "法史学とExegese" 岩波講座世界歴史月報. 8月号. 1-3 (1998)
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[Publications] 佐藤彰一: "中世初期西欧における世帯と定住空間-七世紀末トゥール地方南部の極小空間トジニィを例として-" 平成7〜9年度科学研究費成果報告書「西欧における家族・定住・空間組織の史的研究」. 9-23 (1998)
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[Publications] SATO,Shoichi: "L'agrarium: la charge paysanne avant le regime domanial, VI^e-VIII^e siecles" Journal of Medieval History. Vol.24 No.2. 1-23 (1998)
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[Publications] 佐藤彰一: "マンフェルム文書と修道院-10世紀トゥール地方の世襲借地制をめぐるノート-" 西洋史研究. 27号. 122-139 (1998)
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[Publications] 佐藤彰一: "九世紀トゥール地方の所領構造と領民の存在形態についての覚え書(発表予定)" 名古屋大学文学部研究論集・史学. 45号. (1999)
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[Publications] 佐藤彰一: "カロリング初期ラングドック地方における伯職領の創出について-782年ナルボンヌ司教管区に関する裁判文書をめぐって-" 見城幸雄先生記念論文集. (発表予定). (1999)
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[Publications] 和田卓朗: "絶対主義と改革について-エーベルハント・ヴァイスの二論文の翻訳と解釈-" 大阪市立大学法学雑誌. 44巻3号. 118-186 (1998)
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[Publications] 和田卓朗: "(翻訳)エーベルハント・ヴォイス「近世社会の諸構造と発展(一)」" 大阪市立大学法学雑誌. 44巻4号. 95-163 (1998)
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[Publications] 和田卓朗: "(翻訳)エーベルハント・ヴォイス「近世社会の諸構造と発展(二)」" 大阪市立大学法学雑誌. 45巻1号. 162-196 (1998)
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[Publications] 和田卓朗: "(翻訳)エーベルハント・ヴォイス「近世社会の諸構造と発展(三)」" 大阪市立大学法学雑誌. 45巻2号. 138-175 (1999)
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[Publications] 和田卓朗: "(翻訳)ヴォルフガング・ゼラート「特にライヒスホーフラート…とライヒスカンマーゲリヒト…の例に見る当事者に対する判決の合理的理由付けの歴史について…」" 大阪市立大学法学雑誌. 45巻3・4号(発表予定). (1999)
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[Publications] 神寶秀夫: "(書評)西川洋一「VolksgeschichteとVerfassungsgeschichte」" 法制史研究. 47号. 404-407 (1998)
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[Publications] 神寶秀夫: "(書評)服部良久『ドイツ中世の領邦と貴族』" 史学雑誌. 107巻11号. 106-114 (1998)
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[Publications] 神寶秀夫: "近世ドイツ領邦絶対主義をめぐる諸問題" 法制史研究. 48号. 93-118 (1999)
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[Publications] 西川洋一: "(書評)服部良久『ドイツ中世の領邦と貴族』創文社刊" 創文. 1998年7号. 24-26 (1998)
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[Publications] 西川洋一: "シチリア王国勅法集成の訴訟法(2)" 法学協会雑誌. 115巻8号. 1-45 (1998)
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[Publications] 西川洋一: "シチリア王国勅法集成の訴訟法(3・完)" 法学協会雑誌. 115巻12号. 1-51 (1998)
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[Publications] 西川洋一: "13世紀の君主立法権概念に関するノート--教皇権を素材として(1)" 国家学会雑誌. 112巻1・2号. 1-60 (1999)
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[Publications] 新田一郎: "徳政令と借銭の作法" 歴博. 88号. 6-9 (1998)
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[Publications] 和仁 陽: "(書評)Albert und Lina Mosse, Fast wie mein eigen Vaterland." 国家学会雑誌. 111巻3・4号. 411-414 (1998)
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[Publications] 和仁 陽: "(判決史料紹介)司法省裁判所明治7年11月2日申渡、ほか" 林屋礼二、石井紫郎、青山善充編『図説・判決原本の遺産』(信山社). 9、30-31、32、51、61 (1998)
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[Publications] 村上淳一(翻訳): "クヌート・W・ネル「ヨーロッパ法史入門--権利保護の歴史」" 東京大学出版会, 200 (1999)