国語、国史、固有法-法におけるナショナルな自己意識の成立と展開

1999 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10420001
• Research Institution: Hokkaido University
• Principal Investigator: 小川 浩三 北海道大学, 法学部, 教授 (10142671)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 西川 洋一 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00114596) ; 山田 欣吾 共立女子大学, 国際文化学部, 教授 (70017523) ; 石川 武 北海道大学, 名誉教授 (20000648) ; 石井 紫郎 国際日本文化研究センター, 教授 (00009797) ; 村上 淳一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (80009795)
• Keywords: 概念史 / 国制史 / 比較史 / 言語 / 共通モデル / ローマ / 受容史 / 連続性と変容

Research Abstract

前年度にさまざまに提出された概念史の研究成果を受けて、今年度はさらにそれに異なった時代、異なった国との比較史的検討を加えるという作業を行った。都合2回の全体研究会において、たとえば、18世紀近世ドイツの家と家族の研究を受けて、それと古代ローマにおける家長との比較、後者がいかなる意味でモデルたりうるか、中世以降の受容史のと、各国ごとの偏差が問題にされた。また、前年度の19世紀ドイツ諸都市の構造と市民意識の研究成果を受けて、中世イタリアの都市の統治構造や市民意識、それと中世ドイツの諸都市との対比、さらにはそれらのモデルともなった古代ローマの共和政との比較がなされ、連続性と変容が析出された。また、「租税」や「貢納」といった概念についても、古代のいわゆる「エヴェルジェティスム(恵与慣行)」の制度化の側面からも、古代ローマにおける共和政から元首政期、さらには専主政期の変化を経て制度化される様が国制史の背景を踏まえながら具体的に跡づけられ、さらに、それが教会あるいはゲルマン人諸国家を通じて伝えられてゆく過程が示され、そこから、中世後期・近代への展望が示された。また、「行政」あるいは「官僚制」については、「家産官僚制」のモデルともいうべき近代フランスの官僚制について具体的イメージを与える報告がなされ、それをめぐって、近代の官僚制との違い、プロイセン絶対王政期の官僚制との比較、あるいは、中世教会のある種の官僚システムとの対比がなされた。ここでは、とりわけ、官僚制の十全の機能が自律的・自発的なものではなく、私人あるいは当事者の対立・紛争を背景とした、彼らの積極的関与を前提とするものであったこと、その点はモデルとしての専主政期ローマにも認められることが明らかにされた。これらの研究をさらに深め、さらに、同時に進められている言語・国語史の研究と総合して、総括的な展望を提示することが次年度の課題である。

Research Products

• [Publications] 小川浩三: "第三者弁済と任意代位"西村重雄・児玉寛編『日本民法典と西欧法伝統』(九州大学出版会). 419-441 (2000)
• [Publications] 小菅芳太郎: "(書評)林智良「共和政末期ローマの法学者と社会」"法制史研究. 48号. 309-314 (1999)
• [Publications] テオドシウス法典研究会: "(翻訳)テオドシウス法典(Codex Theodosianus)(9)"立教法学. 53号. 179-204 (1999)
• [Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲルにおけるレーン法と国制(I)"北大法学論集. 50巻3号. 427-468 (1999)
• [Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲルにおけるレーン法と国制(II)"北大法学論集. 50巻4号. 125-182 (1999)
• [Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲルにおけるレーン法と国制(III・完)"北大法学論集. 50巻5号. 63-92 (2000)
• [Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲルにおけるヘールシルト制(I)-国書(テキスト)成立史との関連において-"北大法学論集. 50巻6号. 27-73 (2000)
• [Publications] 佐藤彰一: "九世紀トゥール地方の所領構造と領民の存在形態についての覚え書"名古屋大学文学部研究論集・史学. 45号. 345-365 (1999)
• [Publications] 佐藤彰一: "カロリング初期ラングドック地方における伯職領の創出について-782年ナルボンヌ司教管区に関する裁判文書をめぐって-"見城幸雄先生記念論文集. 139-166 (1999)
• [Publications] 佐藤彰一: "メロヴィング朝期ル・マン地方の土地変動と司教管区-司教ベルトラムヌスの遺言状(616年)を中心に-"田北広道編『中・近世西欧における社会統合の諸相』. 発表予定. 357-388 (2000)
• [Publications] SATO, Shoichi: "The Merovingian Accounting Documents of Tours : Form and Function"Early Medieval Europe. (2000)
• [Publications] 和田卓朗: "(書評)高橋直人「近代刑法形成期における『魔女裁判』-バイエルン刑事法典(1751年)の処罰既定とその実際-」(同志社法学第49巻1号)"法制史研究. 48号. 350-355 (1999)
• [Publications] 和田卓朗: "(翻訳)エーベルハント・ヴァイス「近世社会の諸構造と発展(四)」"大阪市立大学法学雑誌. 46巻1号. 126-172 (1999)
• [Publications] 和田卓朗: "(翻訳)エーベルハント・ヴァイス「近世社会の諸構造と発展(五)」"大阪市立大学法学雑誌. 46巻2号. 113-153 (1999)
• [Publications] 和田卓朗: "(翻訳)エーベルハント・ヴァイス「近世社会の諸構造と発展(六)」(発表予定)"大阪市立大学法学雑誌. 46巻3号. (1999)
• [Publications] 和田卓朗: "(翻訳)ヴォルフガング・ゼラート一八四八年革命の前哨戦における《ゲッティンゲンの七人》"同志社法学. 51巻6号(発表予定). 1-43 (2000)
• [Publications] 神寶秀夫: "ドイツ領邦絶対主義形成過程における中間的諸権力(上)"史淵. 137輯. 1-17 (2000)
• [Publications] 西川洋一: "一三世紀の君主立法権概念に関するノート-教皇権を素材として(2)"国家学会雑誌. 112巻5・6号. 1-34 (1999)
• [Publications] 西川洋一: "一三世紀の君主立法権概念に関するノート-教皇権を素材として(3・完)"国家学会雑誌. 112巻7・8号. 1-39 (1999)
• [Publications] 西川洋一: "後期シュタウフェン期のドイツにおける国王立法の発展"法制史研究. 49号. 1-48 (2000)
• [Publications] 村上淳一: "ジョージ・スペンサー=ブラウンとニクラス・ルーマン"桐蔭法学. 6巻2号. 1-27 (2000)
• [Publications] 石井紫郎: "イエと家"笠谷和比古編『公家と武家II』(思文閣出版). 157-184 (1999)
• [Publications] 新田一郎: "(書評)桜井英治日本中世の経済構造"国家学会雑誌. 112巻1・2号. 209-212 (1999)
• [Publications] 新田一郎: "(書評)笠松宏至中世人との対話"法制史研究. 48号. 201-207 (1999)
• [Publications] 新田一郎: "「中世の公共性」論をめぐって"歴史評論. 596号. 46-55 (1999)
• [Publications] 新田一郎: "日本中世の紛争処理の構図"歴史学研究会編紛争と訴訟の文化史(青木書店). 69-100 (2000)
• [Publications] 佐藤彰一: "ポスト・ローマ期フランク史の研究"岩波書店(発表予定). 360 (2000)
• [Publications] 佐藤彰一 ほか編: "西洋中世史研究入門"名古屋大学出版会(発表予定). 378 (2000)