Research Abstract |
仁科は,前年度に引き続き,信用リスクの概念を精緻化し,実際のデータを用いて計測するために,代表的な資産価格理論の成果をどのように取り入れることができるか,を検討した.対象となる資産の信用リスクを把握するためには,市場メカニズムのもとで整合的な価格形成を分析する資産価格理論の成果を利用することが不可欠である.また,この研究プロセスにおいて,将来の資産家価格動向を描写するために想定する確率過程の特性や限界に関しても検討した. 田畑は,連続時間でのインデックス・ファンドの構成問題を解決するための大規模な0-1変数整数計画問題に対する発見的方法として,遺伝アルゴリズムを利用した解法を具体的に開発した.その成果を韓国で開催された経営科学国際会議で報告するとともに,ワーキング・ペーパーとして公表した.また,このアルゴリズムの意味を説明する経営科学に関する著書を発刊した. 大西は,前年度に引き続き,幾何Brown運動を含む拡散過程のインパルス・コントロールの基礎理論と,そのオペレーションズ・リサーチ,ファイナンス,国際金融経済学に現れる諸問題への応用についての研究を行った.とりわけ,企業の配当政策や投資信託におけるキャッシュ・マネージメントへの応用については,より詳細の検討を行った.また,金融資産の市場価格の変動の持つ(市場)リスク,信用リスクの研究において最も重要な対象となる企業の寿命(倒産までの時間),等の特性の定性的な記述と比較において有用な概念である確率優位(確率順序)について,とくに信頼性・保全性理論における最近の研究成果を踏まえて,検討・整理を行った. 谷川は,信用リスクを取り入れた転換社債の価格モデル,信用リスク顕在化イベントの統計的モデリング手法,信用リスクをヘッジする手段が存在しない場合の最適なヘッジ方法に関し,国内外の研究者と理論構造を中心に意見交換を行ない,前2点について実際のデータを用いた予備調査研究を行なった. 大屋は,金融市場において観測されるデータにはかなりの欠損値がみとめられることに注目し,それらの情報を利用する統計的推測に関する考察を行なった.特に欠損値を生み出す固有の情報が特定できない場合の取り扱いに関して,従来の統計量ではバイアスが生じることを明らかにしている.
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