Research Abstract |
平成10年度は,京都大学数理解析研究所で行われたプロジェクト研究「表現論における組合せ論的方法」と関連させて,研究集会,ワークショップを開催し,国内,国外からの多数の参加者との情報交換,討論,議論などを活発に行った.そして,古典群,量子群やWeyl群,Hecke環などの表現論と組合せ論との境界領域において,次のような研究を行った. (1) 岡田は,石川一若山によって拡張された小行列式のPfaffianによる和公式の応用として,最高ウェイトが長方形,またはそれに近いYoung図形に対応する古典群の既約表現に対して,それらのテンソル積,部分群への制限の分解などを具体的に与える公式を得た.また,C.Krattenthalerとの共同研究において,小行列式の和公式を用いて導かれるSchur関数の関係式を利用して,タイル張りの数え上げ問題において,Proppの予想を一般化して証明した.さらに,小行列式の和公式の無限次元版の,Selberg型の積分などへの応用もめざして研究を進めている. (2) 柏原は,G.Benkart,S.Kangとの共同研究において,Lie超代数gl(m,n)に対応する量子群に対して,crystalbaseを導入し,Young盤を用いた記述を与えた. (3) 小池は,直交群の既約スピン表現を,自然表現のテンソル積表現と基本スピン表現のテンソル積の中に実現する問題について,研究を進めている. (4) 寺田は,Brauer diagramとupdown tableauを対応させるRobinson-Schensted型対応に対して,偶数次元の線型空間上の巾零線型変換,非退化な交代双線型形式,complete flagの3つ組み全体のなす代数多様体の既約分解を利用して,Steinberg流の幾何学的な意味付けを与えた. (5) 山田は,中島達洋との共同研究において,SchurのQ-関数がaffine Lie 環 D^<(2)>_<l+1>の基本表現のウェイトベクトルとなることを見出し,また,そこで発見されたSchurのS一関数とQ一関数の間の一見奇妙な関係について,対称群のスピンモジュラー表現の観点からその意味を明らかにした.
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