1998 Fiscal Year Annual Research Report
パルス中性子によるガラスの励起状態の構造とダイナミックス
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10440094
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Research Institution | The High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
新井 正敏 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (30175955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪野 隆 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (10301722)
大友 季哉 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助手 (90270397)
古坂 道弘 高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教授 (60156966)
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Keywords | ガラス / ダイナミクス / 中性子 |
Research Abstract |
非晶質・ガラスの特徴は、原子配列に規則性が無いことが結晶と際だった違いであり、それが故に普遍的熱物性を持つものと考えられている。回折像には確かに鋭いブラッグピークはなく、その意味で物質中に規則的原子配列は無いと結論されている。しかしながら、構造因子がまったく非干渉性の散乱ではなく、構造を呈している理由は、少なくとも短範囲の原子配列に規則性が存在していること示している。また、それら短範囲秩序がいくつか結びついて中間距離相関を作り出していることも事実のようであり、それを解きあかすために多くの研究が進められてきた。平成10年度の当グループの研究では普遍的熱物性を理解するために、中間距離相関と低エネルギー励起の間に如何なる関連があるか理解するために、永久圧縮石英ガラスの研究を進めると共に、同物質のフオノン・ダイナミックスの詳細についての研究を行った。 典型的ガラスの一つである石英ガラスの動的構造因子S(Q,E)測定により、明らかなフォノン分散関係的強度の分布があることが分かった。このことから、あたかもブリアンゾーンが存在しているかのようである。これは、これまで何れの測定に於いても観測されなかった初めて観測結果である。フォノン分散関係については、これまで金属ガラスなどでQの小さな領域での観測例があるものの、それは、ヘリウム等の液体で観測されているロトン的なものであり、構造因子S(Q)の第一ピークを越えては存在しないものであった。分散関係の起点に対応する偽ブリルアンゾーン・センターはS(Q)のピーク位置に対応していることが分かった。ただし、中間距離相関に起因する第一ピークは例外である。S(Q)は主にSiO4テトラヘドロン単位により形成されていることを考え合わせると、偽ブリルアンゾーンの周期はこのSiO4単位が決定しているものと結論づけることが出来る。Si04単位が単独で存在しているときには当然この分散関係は生ずることは無いので、結合の無秩序性に無関係にSi04単位が、結合していることが分散関係存在の重要な要因と考えることができる。このような概念は、これまで無かったものと思われる。つまり、フォノンの伝搬に規則的周期性は、不可欠なものではなく、構造単位の結合が重要であることになる。分散関係から見積もられる第一ブリアンゾーン内の音速は9400m/sとなる。これは、同物質の実際の音速から観測された6400m/sと非常に異なることが分かる。この分散関係が通常の音波の伝搬に直接的に関連があるかどうかは今のところ結論を言うことは出来ない。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] T.Otomo,M.Arai他: "Observation of collecitve excitation in the amorphous alloy Ni67Zr33" J.Non.Cryst.Solids. 232-234. 613-618 (1999)
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[Publications] H.Nojiri,K.Takahashi,M.Arai,M.Motokawa他: "Neutron diffraction experiments in repeating pulsed high magnetic fields" Physica B. 241-243. 175-178 (1998)
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[Publications] Y.Inamura,M.Arai他: "Intermediate-range structure and low-energy dynamics of densified SiO2 glass" Physica B. 241-243. 903-905 (1998)
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[Publications] N.Nishijima,M.Arai他: "High energy spin excitation of a high-Tc superconductor YBa2Cu306.6" Physica B. 241-243. 540-542 (1998)
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[Publications] D.Welz,M.Nishi,M.Arai,他: "Magnetic excitation of dimerized CuGeO3:continuum scattering and interchain modulation" Physica B. 241-243. 528-530 (1998)
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[Publications] M.Fujita,C.D.Frost,M.Arai他: "Spin dynamics of the spin-Peierls system CuGeO3 at various temperatures" Physica B. 241-243. 210-212 (1998)