1998 Fiscal Year Annual Research Report
分子会合体のダイナミックスにおける大振幅振動の役割の解明
Project/Area Number |
10440168
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
高柳 正夫 東京農工大学, 大学院・生物システム応用科学研究科, 助教授 (50192448)
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Keywords | 分子線レーザー分光 / ジメチルアミノピリジン / ピコリン / TICT状態 / 溶媒効果 / スチルバゾリウムベタイン / 緩和過程 |
Research Abstract |
3年計画のプロジェクトの1年目として,装置類の整備,予備測定を中心に行った。既存の分子線レーザー誘起蛍光測定装置にデジタル・オシロスコープおよびデジタル遅延パルス発生器を付属させることにより,蛍光励起スペクトルおよびホールバーニングスペクトルの測定ができるように整備した。また,共鳴多光子イオン化と飛行時間型質量分析の実験に用いるためターボ分子ポンプを購入し,チェンバーの設計を行った。このチェンバーは,平成11年度に真空ポンプ,真空機器類を購入後作成の予定である。平成10年度には整備した分子線レーザー誘起蛍光測定装置により4-ジメチルアミノピリジンおよびその誘導体,ピコリン類,および大きな溶媒効果を示す色素であるスチルバゾリウムベタインについて,分子線状態での蛍光励起スペクトルの測定を試みた。4-ジメチルアミノピリジンは,極性溶媒中での光照射によりTICT(twisted intramolecular charge transfer)状態を生成することが知られている。分子線中の孤立分子状態では,CT状態は生成せず項間交差が主な緩和過程であることが見出された。しかし,3および5の位置にメチル基を導入することにより,孤立分子状態でもCT発光を示すことが見出された。2-ピコリンでは,メチル基のねじれ振動によるものと考えられる低波数の振動が観測された。しかし,スペクトルの様相はトルエン誘導体のもとは著しく異なっていることがわかった。その原因としては,メチル基とピリジン環をつなぐ結合の次数が高くなっていること,電子励起状態のピコリンの骨格構造が平面から大きくくずれていること,の二点が考えられることがわかった。3-ピコリン,4-ピコリンの励起スペクトルには,振動構造は観測されなかった。これらの分子では発光以外の緩和過程が早いものと考えられる。
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