2000 Fiscal Year Annual Research Report
二次元系ガラスの実現による秩序クラスター構造とその変化の直接観察
Project/Area Number |
10440169
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Research Institution | Institute of Technology |
Principal Investigator |
小國 正晴 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (50144423)
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Keywords | ガラス転移 / 液体構造 / 結晶化 / 結晶核生成 / クラスター / トンネル顕微鏡 / 熱容量 |
Research Abstract |
過冷却液体やガラスの構造と性質は「秩序構造クラスター凝集体モデル」に基づいて理解されるという立場から,その実証とモデルに基づく新規特性の解明に努めた。 二次元系ガラスの分子配置構造を直接に観察するためにトンネル顕微鏡の製作,観察に努めた。信号電流を電圧に変換増幅するアンプを工夫することにより観測可能信号を50pAから5pAまで微小化し,o-ターフェニルのガラス構造の観察に成功したが,長時間安定に観察するに至っていない。今後,さらに装置および測定手法の工夫を進める予定である。 O-ベンジルフェノールを融点以上の343Kからガラス転移温T_g=220K以下のT_aに超急冷し,T_aでt_aだけ保持したのち,213Kまで急加熱し,それ以上についてDSC測定を行った。123K【less than or equal】T_a【less than or equal】133Kではt_a=30sで結晶核の存在が認められ,t_a=10〜100minて消滅し,t_a=318minで再び生成しているのが認められた。この現象は試料の純度に依存することから測定を丹念に繰り返し,その再現性を慎重に確認した。 過冷却液体モノアルキルベンゼンの熱容量を測定し,すべての化合物についてαとβの2つの緩和過程を観測した。βガラス転移温度(T_<gβ>)はエンタルピー緩和の特性温度とともに,熱容量の立ち上がり温度であることが見いだされた。従って,T_<gβ>はある自由度あるいは領域に特性的なガラス転移温度であると理解され,緩和時間分布の短時間端とは理解されない。T_<gα>領域を急冷した場合には,徐冷した場合に比較して大きなβ緩和強度を示す一方,β緩和時間が変化する様子は見られなかった。アルキル鎖長の増大とともに,T_<gα>は高くなる一方,T_<gα>は70K付近で比較的小さく変化した。これらの性質はβ緩和が秩序構造クラスター間の分子全体の再配置運動に基づくとするクラスター構造モデルで解釈された。
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[Publications] Minoru Hanaya: "Orientational ordering/disordering of ions accompanied by Phase transitions inpyridinium tetrafluoroborate crystal"J.Phys.Chem.Solids. E1. 651-657 (2000)
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[Publications] Minoru Hanaya: "Discovery of dipolar-glassy state in a newly found Solid-solution system of C_5NH_6 (BF_4)_<1-x>(PF_6)_x"Solid State Commun.. 115. 57-62 (2000)