1999 Fiscal Year Annual Research Report
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10440172
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大島 康裕 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60213708)
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Keywords | クラスター / ピコ秒時間分解分光 / 溶媒和 / 無輻射過程 / 項間交差 / レーザー誘起蛍光 / 共鳴光イオン化 / 回転コヒーレンス分光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、組成・構造・内部状態を規定した気相クラスターを対象とした実験的研究によって、溶質と溶媒間の微視的相互作用によって無輻射過程がどのように制御されるかを明らかにすることにある。研究第2年である本年度は、色素レーザー用の倍波発生装置を導入して波長可変な2つの紫外光を利用した多重共鳴分光実験が可能となった。また、現有の高速レーザーシステムに改良を加え、より強力かつ安定度の高いピコ秒パルス光を発生できるようにした。以上の研究環境の整備にもとづいて、下記の結果を得た。 1.溶媒の種類によって無輻射過程の反応速度が大きく変化するアクリジンおよびアクリドンについて、単体および水クラスターの気相電子スペクトルを観測した。まず、質量選別光イオン化法によって溶媒和数の確定を行った。さらに、2重共鳴法により測定した赤外スペクトルを密度汎関数法による計算結果と比較することにより、クラスターの水和構造を決定した。特にアクリドンでは、水和ネットワークは溶媒数に対応して段階的に変化することが示された。ピコ秒時間分解蛍光寿命測定の結果、両分子ともにわずか数個の水分子の溶媒和が劇的に蛍光量子収率を増加させることが明らかになった。この現象は近接する2つの電子状態のエネルギー関係が微視的水和によって逆転することに起因していることを、実験的・理論的に示した。 2.ベンゼンクラスターについて、質量選別光イオン化法によって電子スペクトルを測定した。同位体置換効果の詳細な解析から、従来のスペクトルの帰属が誤りであることが明らかになった。 3.ピコ秒時間分解ポンプ-プローブ法を用いた回転コヒーレンス分光によって、シアノアントラセンとそのクラスター(水・アルゴン)の構造を決定した。様々な改良によってスペクトルのS/N比向上を実現し、クラスターの構造解明のための一般的手法として利用できることを示した。
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[Publications] Y.Kawashima,et al.: "Rotational spectrum of the N_2・・CO complex: ortho-N_2 and para-N_2"Chemical Phesics Letters. 315. 201-209 (1999)
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[Publications] M.Mitsui et al.: "Structural characterization of the acridine-(H_2O)_n (n=1-3) clusters by fluorescence-detected infrared spectroscopy"Chemical Physics Letters. 317. 211-219 (2000)