1999 Fiscal Year Annual Research Report
新しい光学分割現象(優先富化)の一般化に関する研究
Project/Area Number |
10440187
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 類 京都大学, 大学院・人間環境学研究科, 助教授 (60207256)
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Keywords | 光学分割 / 混晶 / ラセミ結晶 / ラセミ化合物 / 結晶多形 / 多形転移 / X線構造解析 / 再結晶 |
Research Abstract |
研究代表者は、従来不可能と考えられていたラセミ化合物結晶の単純な再結晶による光学分割が可能な場合を見い出し、この現象を「優先富化」と命名した。本年度も優先富化現象のメカニズムの解明とこの現象の一般性を明らかとすることを目的として研究を継続した。 優先富化現象を示すことが明らかとなった化合物が、いずれもグリセリン骨格、アミド結合、オニウム塩構造を有することに着目し、これらの分子構造と結晶構造がどの程度必要であるかを知るために、これらの誘導体を種々合成し、再結晶による光学分割実験を試み、優先富化現象を示す化合物とそうでないものに分類し、それぞれの化合物について、ラセミ体と光学活性体および非ラセミ体の熱分析、粉末X線回折、そして単結晶が得られたものについてはX線結晶構造解析を行い、分子構造・結晶構造との相関関係について検討した。その結果、大きな置換基効果(電子効果と立体効果)が見られ、結晶構造は置換基により大きく変化し、かつ優先富化現象をも左右することが判明した。また、優先富化現象で必ず析出する低エナンチオマー純度の結晶の結晶構造を、X線結晶構造解析により明らかにすることができた。これらの結果から、優先富化現象を示すラセミ体の安定な結晶形は、ラセミ化合物というよりもむしろ秩序性の高いラセミ結晶で、結晶中に一方のエナンチオマーを過剰に収容することのできる興味深い特徴をもっていることが判明した。一方、優先富化現象を示さなかったラセミ体の安定な結晶形は一様に無秩序なラセミ混晶であり、対称心のあるさまざまな空間群をとることが判明した。
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