2000 Fiscal Year Annual Research Report
高圧化学的手法を用いた小さな無機分子の酸化還元挙動に関する研究
Project/Area Number |
10440193
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高木 秀夫 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (70242807)
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Keywords | 電子移動 / 金属錯体 / ゲーティング / 圧力 |
Research Abstract |
比較的大きなな無機分子と水あるいは誘電率の大きい有機溶媒の分子との相互作用については連続媒体モデルの適用が可能であることが知られている。申請者らは過去の研究において、このような適用が不適当な溶媒や反応系についていくつかの結果を報告してきた。 本申請においては、既に定量性に関して定評のある「体積を用いた電子移動反応の解析法」を用いて、このような問題に取り組むことを目的として研究を遂行しているが、本年度は下記のような成果が得られた。高圧測定については、典型的な酸化剤であるビス(1,4,7-トリアザシクロノナン)ニッケル(III/II)錯体の自己交換反応の活性化体積の測定と、電子移動に際して大きな構造変化を伴う白金ならびにパラジウム錯体の系に関する測定にどまっているが、今後数多くの反応系のデータの収集につとめる予定である。 (1)Ni(1,4,7-triazacyclononane)23+/2+錯体は、体積を用いた反応解析の基準になる酸化還元系であるが、その反応に際して大きな塩効果があることを見い出した。このような効果は、tacn配位子を含む錯体に典型的なアミン窒素上の水素原子の活性化を伴っている可能性が大きく、さらに検討を進めている。 (2)ランタニドイオンであるCe(IV/III)錯体の電子交換反応の速度定数が、正方向と逆方向のいずれの交差反応においても、反応の自由エネルギー差に依存して変化することを見い出した。この現象は水と有機溶媒のいずれの場合にも観測され、自由エネルギーの相関から、特別な溶質-溶媒相互作用はなく高エネルギー中間体の関わるDirectinalな反応である可能性を指摘した。このような現象の発現は過去においてもめずらしい。この系については今年度論文として報告したが、高圧化学的検討と、他のランタニド錯体の系についても鋭意研究を継続している。 (3)銅(II/I)錯体の電子移動過程についてはその詳細なエネルギー論的検討を論文として公表し、国外から高い評価を受けた。現在四座配位子を用いたより拘束性の高い反応系について検討中であるが、今までに以下のような結果を得ている。(1)銅(II)に明らかな二量体の中間体が存在し、今年度その吸収スペクトルを同定した。また、銅(II)イオンの還元では、二量化が律速となることを突き止め、4座配位子を有する反応系でもケーティングが観測されることを証明した。今後高圧化学的研究を遂行し、体積プロファイルによる説明を試みる予定である。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Satoshi Iwatsuki: "Cobalt (II) Phosphine Complexes Stable in Aqueous Solution : Spectroscopic and Kinetic Evidence for Low-Spin Co(II)P6 and Co(II)P3S3 with Tripodal 1,1,1-Tris (dimethylphosphinomethyl) ethane"Inorg.Chem.Commun.. 3. 501-504 (2000)
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[Publications] Nobuyoshikoshino: "Outer-sphere electron transfer reactions of bis (2,9-dialkyl-1,10-phenanthroline) copper (II/I) in acetonitrile : Alkyl=methyl and phenyl"Inorg.React.Mech.. 2. 93-99 (2000)
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[Publications] Mitsuru Matsumoto: "Reduction and oxidation reactions of tetrakis (acetylacetonato) cerium (IV) and-(III) complexes in acetonitrile : Change in the reaction pathways with the driving force of the reaction"Inorg.React.Mech.. 2. 19-31 (2000)
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[Publications] Tsutomu Asano^*: "Comments on 'Supercritical Fluid Tuning of Reaction Rates, The Cis-Trans Isomerization of 4,4'-Disubstituted Azobenzenes"J.Phys.Chem.A. 103. 11250-11251 (1999)
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[Publications] Nobuyoshi Koshino: "Free Energy Barrier of Gated Electron Transfer Reactions : Reduction and Oxidation Reactions of Cu (6,6'-dimethyl-2,2'-bipyridine) 22+/+ with Ru (hexafluoroacetylacetone)30/-"Chem.Phys.Lett.. 306. 291-296 (1999)
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[Publications] Nobuyoshi Koshino: "An Interpretation of Gated Behavior. Kinetic Studies of the Oxidation and Reduction Reactions of Bis (2,9-dimethy-1,10-phenanthroline) copper (I)/(II) in Acetonitrile"Inorg.Chem.. 38. 3352-3360 (1999)
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[Publications] 石原浩二,高木秀夫,矢野良子 共訳: "スワドル無機化学"東京化学同人. 468 (1999)