2000 Fiscal Year Annual Research Report
林床植物集団の遺伝的組成に及ぼす森林孤立化の影響の定量的評価
Project/Area Number |
10440230
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Research Institution | HOKKAIDO UNVERSITY |
Principal Investigator |
大原 雅 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助教授 (90194274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 壮則 北海道東海大学, 国際文化学部, 教授 (80206755)
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Keywords | 遺伝的変異 / エンレイソウ属植物 / 個体群統計学 / 森林分断化 / 長期センサス / 林床植物 |
Research Abstract |
森林の分断化が残存する植物集団の存続可能性に与える影響には、個体群統計学的(demographic)側面と遺伝学的(genetic)側面の大きく2つの側面がある。3年度(最終年度)にあたる12年度は、森林の分断化が多年生林床植物エンレイソウ属植物集団に与える影響に関してこの両側面からの解析を行った。 1.個体群統計学的側面:長年の個体追跡センサスデータを持つエンレイソウおよびオオバナノエンレイソウに関して、Alvarez-Buylla & Slatkin(1991)の定式に基づき、個体群成長率の平均と分散を求め、将来の個体数の増加減少を確率的に予測した。その結果、エンレイソウの個体群成長率の分布の平均値はオオバナノエンレイソウよりも低く、平均行列によって求められた個体群成長率とは逆の関係を示した。エンレイソウの個体数が50年後に初期個体数の30%以下に減少する確率は75.6%であるのに対して、オオバナノエンレイソウのその確率は0%であった。 2.遺伝学的側面:北海道十勝地方に点在するさまざまなサイズの12集団を対象にアイソザイム遺伝子(6酵素11遺伝子座)を指標とした調査・解析を行った。その結果、各集団において観察された多型遺伝子座の割合(P),遺伝子座当たりの対立遺伝子数の平均値(A)は、集団サイズと強い正の相関関係を示し、小集団において遺伝的変異量が失われている傾向が見い出された。小集団で観察されなかった対立遺伝子は、全て出現頻度の低い稀な対立遺伝子(q<0.1)であったことから、遺伝的変異量の減少は分断時の遺伝的ボトルネックによって確率的にこれらの対立遺伝子が失われたことによるものと考えられた。一方、各調査集団の遺伝的分化の度合いは低いものの(Fst=0.13)、固定指数や遺伝距離を用いた解析から局所的な地域集団が分化していることが明らかになった。
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