2000 Fiscal Year Annual Research Report
地理的隔離と集団サイズがイワヒバリ地域個体群の遺伝的多様性に与える影響
Project/Area Number |
10440232
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
中村 雅彦 上越教育大学, 学校教育学部, 助教授 (90272880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小池 裕子 九州大学, 大学院・比較社会文化研究科, 教授 (40107462)
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Keywords | イワヒバリ / 高山帯 / 個体群動態 / ミドコンドリアDNA / 越冬個体群 / 繁殖個体群 / 遺伝的多様性 |
Research Abstract |
平成12年度研究実績の概要 昨年同様、昭和60年以来個体群生態学的研究を継続している乗鞍岳において、本年度も継続調査を行ったところ、標高2600m以上の山頂部に113個体のイワヒバリが生息していることがわかった。113個体のうち前年度に乗鞍岳で繁殖し、本年再び継続して繁殖した個体は93個体(帰還率は82%)であった。前年度に標識した雛の個体数は45個体でそのうち42%の個体が本年度成鳥として帰還した。他の鳥類に比べ、極端に高い成鳥の帰還率及び若鳥の帰還率は、昨年同様の結果であり、乗鞍イワヒバリ個体群は遺伝的多様性のかなり低い集団であることが標識調査からも示唆された。捕獲・標識調査の際には各個体から少量の血液を採血し、マイクロサテライト多型分析のためDNAを抽出した。 イワヒバリ隔離個体群として昨年度、サンプルを収集できなかった立山に再入山し計7個体から血液サンプルを得ることができた。本年度は立山以外にイワヒバリ繁殖分布の北限に位置する秋田県・山形県境の鳥海山をはじめ山形県月山、南アルプス仙丈ヶ岳、八ヶ岳赤岳、栃木県茶臼岳と調査範囲を拡大し、各山塊に生息するイワヒバリの個体群サイズを把握するとともに、捕獲した個体から血液サンプルを収集した。平成13年度には富士山、南アルプス北部、北アルプス北部の山岳の個体群サイズと血液サンプルの収集を目標としたい。 イワヒバリは漂鳥であり、秋になると繁殖地となる高山帯から渡去し、冬から初春にかけて低山帯のV字谷で越冬する。越冬個体群は繁殖個体群とどのような関係にあるのか、前年と同様、山梨県塩山市の一ノ瀬、群馬県足尾町、長野県長谷村戸草、長野県駒ヶ根市大久保、長野県中川村小渋、山梨県河口湖町御坂、長野県安曇村稲核で越冬するイワヒバリを捕獲採血した。これらの越冬地の中で長野県安曇村稲核は本年度新たに発見した越冬地である。 イワヒバリの遺伝的多様性の解析に関して、九州大学大学院比較社会文化研究科の小池裕子教授のグループが現在分析を進めている。現時点では、ミトコンドリア領域の増幅に成功し、ほぼすべての塩基配列を読むことに成功した。後は、収集したサンプルを用い、解析を進めるだけの段階となった。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Kubota H.and Nakamura M.: "Effects of supplemental food on intra- and inter-specific behaviour of the Varied Tit Parus varius"The Ibis. 142・2. 312-319 (2000)
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[Publications] Shimizu Y.and Nakamura M.: "Mutual and Parastitic Mixed-feeding Associations in Waterfowl : A Food-addition Expriment"Japanese Journal of Ornithology. 49・1. 17-30 (2000)
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[Publications] Nakamura M.and Atumi T.: "Adaptive significance of winter pair bond in male pintail, Anas acuta"Journal of Ethology. 18・1. 127-131 (2000)
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[Publications] Chiba A.and Nakamura M.: "Note on the Morphology of the Sperm Storage Tubules in the Polygynandrous Alpine Accentor, Prunella callaris"Journal of the Yamashina Institute for Ornitology. 32・2. 73-76 (2000)
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[Publications] Nakamura M.and Nishiumi Y.: "Large Variation in the Sex Ratio in Winter Flock of the Alpine Accentor Prunella collaris"Japanese Journal of Ornithology. 49・4(in press). (2000)
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[Publications] Chiba A.and Nakamura M.: "Microscopic structure of the sperm storage tubules in the polygynandrous alpine accentor, Prunella collaris (Aves)"Acta Zoologica. 82・4(in press). (2000)
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[Publications] 中村雅彦: "MoRs2000年春号「雲上の鳥、イワヒバリ」"JRA日本中央競馬会. 18-19(2) (2000)