Research Abstract |
本研究では,各地域の厚生水準を評価するために各種地域統計データを組み合わせることで作成される地域生活指標に着目し,(1)理論的位置づけの整理,(2)作成方法の整理および開発,との2つの視点から地域生活指標の国土・地域計画への有効利用の可能性を検討している.平成11年度は,(2)の作成方法の整理および開発に重点を置いて研究を進めた. (1)に関連した研究としては,まず,福本・濱洲(現在,投稿中)および福本(現在,投稿中)があげられる.それぞれの論文の中でレビューを行い,意思決定者が満たすべき条件(公理)を列挙し,それらを満足する地域生活指標の関数形を導出している.また,福本(現在,印刷中)は直接,本研究の研究目的と関連するわけではないが,本研究における成果をもとに,交通計画における公平性を考慮したプロジェクト評価について論点を整理している. (2)に関連した研究としては,まず,福本・濱洲(現在,投稿中)があげられる.平成10年度に行った研究(Fukumoto et al.(1999))を発展させ,中央政府の公共投資の地域間配分政策における効率性と衡平性のトレードオフヘの対処ならびに政治主体が及ぼしてきた影響の定量的把握を行った.その結果,政治主体が及ぼしてきた影響が小さくないこと,さらに,中央政府を公平無私な意思決定者と捉えるか政治的取引の場と捉えるかで戦後の公共投資の地域間配分政策に対する判断が大きく左右されることが明らかとなった.また,福本(現在,投稿中)では,分析者が一般に用いる地域統計データが何らかの形で集計されていることに着目し,集計化された統計データから作成された地域生活指標の分析精度を定量的に把握する方法論を検討し,簡単なシミュレーションを通じて,その有効性を検証した.この方法論については,平成12年度に,実際の地域統計データを用いて実証分析を蓄積することを検討している.
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