1999 Fiscal Year Annual Research Report
繰り返し変形したNi、Fe中の転位および原子空孔の陽電子消滅寿命測定法による研究
Project/Area Number |
10450235
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
蔵元 英一 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (30013519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沢 一人 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (90253541)
安部 博信 九州大学, 応用力学研究所, 助手 (90038555)
佃 昇 九州大学, 応用力学研究所, 助教授 (90038563)
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Keywords | 金属 / 塑性変形 / 転位 / 原子空孔 / 陽電子寿命 / 格子緩和 / 多体原子間ポテンシャル / 陽電子寿命計算 |
Research Abstract |
陽電子消滅寿命測定法は結晶中の原子レベルの欠陥とくに空孔タイプの欠陥の検出に非常に有用な物理手段である。この手段を用いてこれまでに照射導入欠陥の研究が進んできたが、本研究では塑性変形によって導入された欠陥について研究が進められている。照射によって導入された原子空孔およびその集合体に関してはこれまでに貴重な知見が得られているので、それに基づいて変形導入の欠陥に関する研究が実験、計算両面から進行している。変形によって転位が導入されるので、古くから変形試料に対する陽電子寿命は転位線、特に刃状転位線上に捕獲された陽電子の寿命であると考えられてきた。しかもその値は原子空孔における寿命とほぼ等しいかあるいは少し短いとされてきた。しかし本グループによるFe中の刃状転位線上に捕獲された陽電子の寿命計算では原子空孔における値(176psec)よりはるかに短い値(119psec)が得られた。さらに実験で得られている値(160psec)は刃状転位線に結合している原子空孔における陽電子の寿命であることを示した。ここで原子空孔は変形によって導入されたものである。すなわち運動するらせん転位線同士の切り合いにおいてジョグドラッギングにより形成された空孔が転位線に捕獲されたものである。この考えは次第に世界の陽電子消滅研究者の間に浸透しつつある。Niにおいても転位線(拡張した刃状転位線)における陽電子の寿命は非常に短い(117psec)。高純度Niを作製して変形により転位を導入した試料に対する陽電子の寿命は200psecを超える値を示しており、このことは変形によって転位線のみ導入されたのではなく、原子空孔およびその集合体が導入されていることを示している。転位線が主な捕獲サイトであるならば等時焼鈍によって寿命は変化しないはずであるが実際には寿命は減少の一途をたどる結果が得られた。減少の原因は空孔集合体の変態の変化によるものと考えられる。短い寿命を示す空孔集合体を、多体原子間ポテンシャルを用いた計算機シミュレーションによる欠陥構造の決定と寿命計算により調べたところ、積層欠陥四面体がもっとも可能性が高いことが判明した。Niにおいて積層欠陥四面体が形成されることは他の実験からも知られている。このように本研究において原子レベルの欠陥に関する貴重な情報が数多く得られてきておりさらに最終年に向けて進展が期待される。
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[Publications] T.Onitsuka,H.Ohkubo,M.Takenaka,N.Tsukuda and E.Kuramoto: "Positron Lifetime Calculation for a Vacancy and Vacancy Clusters in Graphite"Trans. Mat. Res. Soc. Japan,. Vol.24. 237-240 (1999)
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[Publications] E.Kuramoto: "Computer Simulation of Fundamental Behaviors of Interstitial Clusters in Fe and Ni"J. Nucl. Mat.,. 276. 143-153 (2000)
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[Publications] K.Ohsawa and E.Kuramoto: "Flexible Boundary Condition for a Moving Dislocation"J. Appl. Phys.,. 86. 179-185 (1999)
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[Publications] H.Abe and E.Kuramoto: "Interaction of Solutes with Irradiation-Induced Defects of Electron-Irradiated Dilute Iron Alloys"J. Nucl. Mat.,. 271&272. 205-208 (1999)
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[Publications] M.Koyanagi,T.Tsutsumi,K.Ohsawa and E.Kuramoto: "Atomic Structure and Dynamic Behavior of Small Interstitial Clusters in Fe and Ni"Computational Materials Science,. 14. 103-107 (1999)
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[Publications] E.Kuramoto,T.Tsutsumi,K.Ueno,M.Ohmura and Y.Kamimura: "Position Lifetime Calculations on Vacancy Clusters and Dislocations in Ni and Fe"Computational Materials Science,. 14. 28-35 (1999)