2000 Fiscal Year Annual Research Report
歯科用低貴金属合金の熱処理組織と腐食環境破壊機構の解明
Project/Area Number |
10450258
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
新家 光雄 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (50126942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 壽男 愛知学院大学, 歯学部, 助教授 (50090147)
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Keywords | 低貴金属歯科用合金 / 銀パラジウム銅金合金 / 熱処理 / ミクロ組織 / 引張特性 / 破壊靭性 / 疲労特性 / 摩擦磨耗特性 |
Research Abstract |
低貴金属合金である銀パラジウム銅金合金について、種々の熱処理を施し、それらの引張特性、静的破壊靭性、動的破壊靭性、大気中での疲労特性、人工だ液中での疲労特性および人工だ液中での摩擦磨耗特性とミクロ組織との関係調査したところ、成書等で推奨されている従来の熱処理、すなわち溶体化・時効処理に比べて、それより比較的低温での溶体化後空冷処理(1073Kで3.6ks溶体化後空冷)が優れていることを見出した。この熱処理では、静的および動的破壊靭性値、引張強度および伸びが向上する上、大気および人工だ液中での疲労特性にも優れ、熱処理工程で時効処理を省略できるため、簡便で安価な熱処理プロセスを実現するに至ったと言える。これは、これまで歯科領域では、引張特性のみによって力学性能を評価していたためであり、ここで破壊靭性を力学性能の評価に取り入れたこと、さらに人工だ液中での疲労特性をミクロ組織と系統的に関連させて評価したことで、本合金系の従来熱処理が必ずしも最適ではないことを指摘することができた。続いて上記各特性に及ぼすミクロ組織の影響をミクロ組織と定量的に関連させて詳細な検討を行った。その場合、ミクロ組織、特にβ相量を系統的に変化させて、引張特性、破壊靭性、大気および人工だ液中での疲労特性ならびに摩擦磨耗特性を調査した。最高時効までは、析出β相の体積率が増加するに伴ない、強度が増加し、延性は低下することが判明した。本合金の溶体化水冷材の疲労強度は、低サイクル疲労寿命領域では、溶体化温度が高いほどα2相の固溶強化が増大するため、大きな疲労強度を示す傾向となった。これに対し、高サイクル疲労寿命領域では、溶体化温度が低いほどα_1相が析出し、このα_1相によるひずみの緩和が生じるため大きな疲労強度を示す傾向となった。α_1相は局所ひずみの緩和効果に大きく寄与することにより、高サイクル疲労寿命領域における疲労強度を向上させるが、疲労強度の絶対値を向上させるには、β相の体積率も考慮することが必要であることが判明した。人工だ液中での高サイクル疲労寿命領域では、腐食環境への合金の暴露時間が長くなり、β相と母相界面が優先腐食されるためβ相の析出量が多い溶体化・時効材でこの現象が激しくなり、腐食サイトへの応力集中が大きくなるため溶体化・時効材の疲労強度が大気中の場合に比べより低下すると考えられた。本合金の人工だ液中での摩擦磨耗特性の検討により、金属間化合物のβ相が多く析出している溶体化・時効材で、摩擦磨耗重量減少量が最も小さくなることがわかった。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 高橋志郎: "銀パラジウム銅金合金の破壊特性に及ばすCuおよびZnの影響"歯科材料・器械. 17巻5号. 294-303 (1998)
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[Publications] 高橋志郎: "銀パラジウム銅金合金の引張破壊特性に及ばすβ相の体積率の影響"歯科材料・器械. 17巻6号. 370-377 (1998)
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[Publications] M.Niinomi: "Fbacture Characteristics of Dental Ag-Pd-Cu-Au Type Alloys with Respect to Microstructure"14巻. 224-258 (1999)
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[Publications] 高橋志郎: "銀パラジウム銅金合金の破壊特性に及ぼす析出β相の影響"歯科材料・器械. 19巻. 162-169 (2000)
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[Publications] 新家光雄: "歯科用銀パラジューム銅金合金の大気中における疲労特性"歯科材料・器械. 19巻. 544-522 (2000)
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[Publications] T.Mizumoto: "Effect of Microstructure on Fatigue Strength of Dental Ag-Pd-Cu-Au-Zn Alloy in Artificial Saliva"Structural Biomaterials for the 21st Century. 83-90 (2001)