Research Abstract |
高周波炉または縦型抵抗炉において,1600℃,脱酸アルゴン気流中で,MgO,Al_2O_3またはZrO_2るつほを用いてFe-10%Ni系合金を溶解し,初期酸素濃度を制御した。これに,脱酸剤としてSi,Ti,Al,ZrまたはCeを添加し,脱酸生成物を生じさせて一次介在物とした後,1600℃での保持時間を種々変化させてから,水中急冷を行いメタルを凝固させた。メタル断面を研磨し,メタル各部について,光学顕微鏡観察により介在物の数・大きさ・分布状態を求めた。メタル各部について介在物抽出を行い,ろ過物をSEMで観察することにより,介在物の形態・大きさを調べた。また,抽出した介在物組成を化学分析により求めた。 その結果,1600℃での保持時間が長くなるにつれて介在物粒径は大きくなり,介在物数は少なくなった。脱酸力はCe>Zr>>Ti>Siであるが,この脱酸力の順に,介在物数は少なくなった。また,いずれの介在物においても,生成直後にはFeOが含まれていたが,1600℃での保持時間が長くなるにつれてFeO濃度は低下し,脱酸力の順に介在物中のFeO濃度は低かった。 メタル試料の全酸素濃度分析値から,計算によって求めた溶存酸素濃度を差し引くことによって,介在物としての酸素濃度を求めた。この値は,抽出した介在物の化学分析値から計算によって求めた介在物としての酸素濃度とよく一致した。このことから,介在物抽出法の妥当性が確かめられた。 メタル試料断面を顕微鏡観察することによって求めた介在物個数および大きさからDeHoffをもとに介在物濃度を算出したが,化学分析値とは一致しなかった。従来,メタル試料断面における介在物の大きさおよび個数から,DeHoff式をもとに介在物の体積率を求める方法が広く用いられているが,本研究から,メタル試料断面における介在物の大きさおよび個数から試料全体の介在物の粒径分布を推定する方法について検討を行う必要のあることが明らかになった。精密粒度分布測定装置によりメタルから抽出した介在物の粒度分布を測定したが,電解前に既に電解液中に懸濁している微粒子が介在物の粒度分布に大きく影響をおよぼすことがわかった。このため,電解液を予め0.1ミクロンのフイルムフィルターで吸引ろ過し,電解はクリーンベンチ内で行う必要があった。
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